[行列解析7.2.9]系:コレスキー分解と半正定値行列の特徴づけ

7.2.9コレスキー分解と半正定値行列の特徴づけ

系 7.2.9(コレスキー分解) \( A \in M_n \) がエルミート行列であるとする。このとき、\( A \) が半正定値(それぞれ、正定値)であることと、対角要素が非負(それぞれ、正)の下三角行列 \( L \in M_n \) が存在して

A = LL^{*}

が成り立つことは同値である。もし \( A \) が正定値であるならば、\( L \) は一意である。また、\( A \) が実行列である場合、\( L \) も実行列として取ることができる。

証明

\( A^{1/2} = QR \) を QR分解とする。このとき \( L = R^{*} \) とおくと、

A = A^{1/2} A^{1/2} = R^{*} Q^{*} Q R = R^{*} R = L L^{*}

が成り立つ。\( L \) の性質は、(2.1.14) で述べた \( R \) の性質から従う。

次に、内積空間 \( V \) において、内積を \( \langle \cdot , \cdot \rangle \) とし、\( v_1, \ldots, v_m \) を \( V \) のベクトルとする。このとき、これらのベクトルに関するグラム行列 \( G \) は次のように定義される:

G = [ \langle v_j, v_i \rangle ]_{i,j=1}^{m} \in M_m

もし \( A \in M_n \) が半正定値行列ならば、\( A^{1/2} = [v_1 \ \ldots \ v_n] \) と列ごとに分割できる。このとき次が成り立つ:

A = A^{1/2} A^{1/2} = (A^{1/2})^{*} A^{1/2} = [ v_i^{*} v_j ] = [ \langle v_j, v_i \rangle ]_{i,j=1}^{n}

ここで \( \langle \cdot , \cdot \rangle \) は \( \mathbb{C}^n \) 上のユークリッド内積である。したがって、すべての半正定値行列はグラム行列である。

次に示す定理は、この逆の含意をより広い文脈で確立するものである。すなわち、有限次元・無限次元を問わず、任意の内積空間におけるベクトルのグラム行列は半正定値である。


行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました