7.2.8系:エルミート行列の正定値性と合同
エルミート行列 \( A \) が正定値であることと、\( A \) が単位行列に ∗合同(スター合同)であることは同値である。
証明
これは定理 (7.2.7) の単なる言い換えである。
演習
\( A \in M_n \) が正定値であり、かつ \( A = C^{*}C \) (\( C \in M_n \))とする。次を示せ:
あるユニタリ行列 \( V \in M_n \) が存在して、\( C = V A^{1/2} \) が成り立つ。
(ヒント)次を示せ:
A^{-1/2} C^{*} C A^{-1/2} = (C A^{-1/2})^{*} (C A^{-1/2}) = I
補足:半正定値行列の分解
半正定値行列 \( A \) の分解 \( A = B^{*}B \) は、いくつかの異なる方法で得られる。
たとえば、任意の正方行列 \( C \) は QR分解(式 (2.1.14))をもつ:
C = Q R
ここで \( Q \) はユニタリ行列、\( R \) は上三角行列で、その対角成分は非負であり、\( R \) の階数は \( C \) と同じである。
このとき、
C^{*} C = (Q R)^{*} Q R = R^{*} Q^{*} Q R = R^{*} R
が成り立つ。したがって、\( A = R^{*} R \) の形でも半正定値行列の分解が得られる。
行列解析の総本山

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