[行列解析7.2.4]系:エルミート行列の特性多項式による半正定値の判定

7.2.4 系:エルミート行列の特性多項式による半正定値の判定

\( A \in M_n \) がエルミート行列であり、その特性多項式が

p_A(t) = a_n t^n + a_{n-1} t^{n-1} + \cdots + a_{n-m} t^{n-m}

で与えられているとする。ただし、\( a_n = 1 \)、\( a_{n-m} \ne 0 \)、および \( 1 \leq m \leq n \) である。

このとき、行列 \( A \) が半正定値であることと、各 \( k = n - m, \ldots, n - 1 \) に対して

a_k a_{k+1} \lt 0

が成り立つことは同値である。

証明

仮定より、特性多項式 \( p_A(t) \) の最高次項からの係数がすべて 0 ではなく、符号が交互に変化している。 この条件が満たされると、\( p_A(t) \) は負の実数解を持たないため、行列 \( A \) の固有値はすべて非負となる。

逆に、もし \( A \) が半正定値であるなら、その正の固有値を \( \lambda_1, \ldots, \lambda_m \) とし、残りの \( n - m \) 個の固有値はすべて 0 である。 帰納法により、多項式

(t - \lambda_1),\quad (t - \lambda_1)(t - \lambda_2),\quad \ldots,\quad (t - \lambda_1)(t - \lambda_2)\cdots(t - \lambda_m)

の係数の符号は厳密に交互に変化することが示される。これに \( t^{n-m} \) を掛けることで、特性多項式 \( p_A(t) \) が得られる。

次に示す定理では、(7.1.5) における「半正定値行列の主小行列式に関する観察」の逆を与えるものであり、正定値の場合にはやや意外な結果を含む。


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