7.1.18観察:半正定値行列と正定値行列における合同変換の性質
観察 7.1.8 \( A \in M_n \) をエルミート行列とし、\( C \in M_{n,m} \) とする。
(a) \( A \) が半正定値であると仮定する。このとき、\( C^{*} A C \) も半正定値であり、さらに次が成り立つ。
nullspace\( (C^{*} A C) = \) nullspace\( (A C) \)、かつ rank\( (C^{*} A C) = \) rank\( (A C) \)。
(b) \( A \) が正定値であると仮定する。このとき、rank\( (C^{*} A C) = \) rank\( (C) \) であり、さらに \( C^{*} A C \) が正定値であるのは、かつそのときに限り rank\( (C) = m \) である。
証明
(a) \( x \in \mathbb{C}^n \) とし、\( y = Cx \) とおく。このとき次が成り立つ。
x^{*} C^{*} A C x = y^{*} A y \ge 0
したがって、\( C^{*} A C \) は半正定値である。残りの主張は式 (7.1.6) から導かれる。
C^{*} A C x = 0 \;\Leftrightarrow\; x^{*} C^{*} A C x = (C x)^{*} A (C x) = 0 \;\Leftrightarrow\; A(Cx) = A Cx = 0
したがって、\( C^{*} A C \) と \( A C \) の零空間(null space)は同じであり、ゆえにそれらの階数(rank)も等しい。
(b) \( A \) が非特異(nonsingular)であるため、(a) から次が従う。
\operatorname{rank} C = \operatorname{rank} A C = \operatorname{rank} C^{*} A C
前の系(Corollary 7.1.7)より、半正定値行列 \( C^{*} A C \in M_m \) が正定値であるのは、かつそのときに限りそれが非特異である場合である。これは、次の等式が成り立つとき、すなわち \( m = \operatorname{rank}(C^{*} A C) = \operatorname{rank}(C) \) のときに限られる。
演習
\( A \in M_n \)、\( C \in M_m \) で \( m \gt n \) のとき、次のことを例を用いて示せ。
\( A \) が半正定値であるが正定値ではない場合でも、\( C^{*} A C \) は正定値となることがある。
以下の観察は、正定値行列に関する多くの結果が、連続性の議論を用いることで半正定値行列にも拡張できることを示している。
行列解析の総本山

コメント