[行列解析7.1.2]観察:正定値・半正定値行列の主小行列に関する性質

7.1.2 正定値・半正定値行列の主小行列に関する性質

次の観察は、エルミート行列における正定値性や半正定値性が、その主小行列(principal submatrix)にも引き継がれることを示している。

観察 7.1.2

\( A \in M_n \) をエルミート行列とする。もし \( A \) が正定値であるならば、そのすべての主小行列も正定値である。
また、もし \( A \) が半正定値であるならば、そのすべての主小行列も半正定値である。

証明

\(\{1, 2, \ldots, n\}\) の真部分集合を \( \alpha \) とし、対応する主小行列を \( A[\alpha] \) とする(式 (0.7.1) 参照)。
次に、ベクトル \( x \in \mathbf{C}^n \) を次のようにとる。

x[\alpha] \ne 0, \quad x[\alpha^{c}] = 0

このとき、\( x \ne 0 \) であり、さらに次が成り立つ。

x[\alpha]^{*} A[\alpha] x[\alpha] = x^{*} A x \gt 0

非零ベクトル \( x[\alpha] \) の選び方は任意であるから、\( A[\alpha] \) は正定値であることがわかる。
同様の議論により、もし \( A \) が半正定値であるならば、その主小行列 \( A[\alpha] \) も半正定値である。

演習問題

正定値行列(または半正定値行列)の各主対角成分が、それぞれ正の実数(または非負の実数)である理由を説明せよ。


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