[行列解析7.0.1]ヘッセ行列、最小化、および凸性

7.0.1.ヘッセ行列、最小化、および凸性

滑らかな実数値関数 \( f \) を、ある領域 \( D \subset \mathbb{R}^n \) 上で考える。もし \( y = [y_i] \) が \( D \) の内部点であるなら、テイラーの定理により次が成り立つ。

f(x) = f(y) + \sum_{i=1}^{n} (x_i - y_i) \left. \frac{\partial f}{\partial x_i} \right|_y 
+ \frac{1}{2} \sum_{i,j=1}^{n} (x_i - y_i)(x_j - y_j) \left. \frac{\partial^2 f}{\partial x_i \partial x_j} \right|_y + \cdots

ここで \( x \in D \) は \( y \) の近傍の点であるとする。もし \( y \) が \( f \) の臨界点(すなわち、全ての1階偏導関数が消える点)であるなら、 次のように書ける。

f(x) - f(y) = \frac{1}{2} \sum_{i,j=1}^{n} (x_i - y_i)(x_j - y_j) 
\left. \frac{\partial^2 f}{\partial x_i \partial x_j} \right|_y + \cdots 
= \frac{1}{2} (x - y)^{T} H(f; y) (x - y) + \cdots

実数 \( n \times n \) 行列

H(f; y) = \left[ \left. \frac{\partial^2 f}{\partial x_i \partial x_j} \right|_y \right]_{i,j=1}^{n}

を、点 \( y \) における \( f \) のヘッセ行列(Hessian)という。混合偏導関数の等式 \( \frac{\partial^2 f}{\partial x_i \partial x_j} = \frac{\partial^2 f}{\partial x_j \partial x_i} \) が成り立つことから、ヘッセ行列 \( H(f; y) \) は対称行列である。

次の2次形式

(7.0.1.1)
z^{T} H(f; y) z, \quad z \neq 0, \; z \in \mathbb{R}^{n}

が常に正であるなら、点 \( y \) は \( f \) の相対的極小点である。逆に、この2次形式が常に負であるなら、\( y \) は相対的極大点である。 特に \( n = 1 \) の場合、これらの条件はよく知られた2階導関数による極値判定と一致する。

さらに、この2次形式(7.0.1.1)が関数 \( f \) の臨界点だけでなく、領域 \( D \) の全ての点で非負である場合、 関数 \( f \) は領域 \( D \) において凸関数である。このことは、\( n = 1 \) の場合のよく知られた事実の直接的な一般化である。


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