6.2.16
定理6.2.16.行列 \(A \in M_n\) と、\(\mathcal{G}(A)\) のノード \(P_i\) および \(P_j\) が与えられたとする。次の3条件は同値である。
(a) \(\mathcal{G}(A)\) において、\(P_i\) から \(P_j\) への長さ \(m\) の有向経路が存在する。
(b) \(|A|^m\) の \(i,j\) 成分が非ゼロである。
(c) \(M(A)^m\) の \(i,j\) 成分が非ゼロである。
証明.帰納法により示す。\(m = 1\) の場合、主張は自明である。\(m = 2\) の場合、次を計算する。
(|A|^2)_{ij} = \sum_{k=1}^{n} |A|_{ik} |A|_{kj} = \sum_{k=1}^{n} |a_{ik}| |a_{kj}|
したがって、\((|A|^2)_{ij} \neq 0\) であることは、少なくとも1つの \(k\) に対して \(a_{ik}\) と \(a_{kj}\) が両方とも非ゼロである場合に限る。これは \(\mathcal{G}(A)\) において \(P_i\) から \(P_j\) への長さ2の経路が存在する場合に同値である。
一般の場合、\(m = q\) で主張が成立すると仮定する。このとき
(|A|^{q+1})_{ij} = \sum_{k=1}^{n} (|A|^q)_{ik} |A|_{kj} = \sum_{k=1}^{n} (|A|^q)_{ik} |a_{kj}| \neq 0
であることは、少なくとも1つの \(k\) に対して \((|A|^q)_{ik}\) と \(|a_{kj}|\) が両方非ゼロである場合に限る。これは、\(P_i\) から \(P_k\) への長さ \(q\) の経路と、\(P_k\) から \(P_j\) への長さ1の経路が存在する場合に同値であり、つまり \(P_i\) から \(P_j\) への長さ \(q+1\) の経路が存在する場合に同値である。
同じ議論は \(M(A)\) に対しても成立する。■
行列解析の総本山

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