6.2.目次
- 6.2.2 補題:ゲルシュゴリン円盤の性質
- 6.2.3 補題:ゲルシュゴリン円盤と固有ベクトルの関係
- 6.2.5 定理:ゲルシュゴリン円と固有値の関係
- 6.2.6 系:対角優位性から得られる非特異性の判定
- 6.2.7 定義:行列の性質SC(Strong Connectivity)
- 6.2.8 改良された定理:性質SCをもつ行列とゲルシュゴリン円
- 6.2.9 改良された系:性質SCと非特異性の条件
- 6.2.10 定義:性質SCと行列のインジケータ行列
- 6.2.11 定義:行列の有向グラフの定義
- 6.2.12 定義:有向グラフにおける有向経路とサイクルの定義
- 6.2.13 定義:強連結有向グラフ
- 6.2.14 定理:SC性と強連結グラフの同値性
- 6.2.15 観察:有向経路の長さとSC性の判定
- 6.2.16 定理:有向経路と行列のべき乗の関係
- 6.2.17 定義:非負行列と正行列
- 6.2.18 系:非負行列と正行列
- 6.2.19 系:SC性と行列の正性条件の同値性
- 6.2.20 系:SC性と行列エントリの関係
- 6.2.21 定義:可約行列
- 6.2.22 定義:不可約行列
- 6.2.23 定理:不可約行列の同値条件
- 6.2.24 定理:不可約行列の同値条件のまとめ
- 6.2.25 定義:不可約対角優位行列
- 6.2.26 定理:タウスキー
- 6.2.27 系:タウスキー
- 6.2 問題集
ゲルシュゴリンの円盤 ― より深い考察
これまでに、厳密な対角優位(strict diagonal dominance)が行列の非特異性(nonsingularity)を保証する十分条件であることを確認した。しかし、単なる対角優位(diagonal dominance)だけでは非特異性は保証されない。
いくつかの \(2 \times 2\) 行列の例を考えると、次のような推測が導かれる。すなわち、「対角優位に加えて、少なくとも1つの \(i = 1, \ldots, n\) に対して次の厳密な不等式
\lvert a_{ii} \rvert \gt R_i = \sum_{j \ne i} \lvert a_{ij} \rvert
が成り立つならば、その行列は非特異である」というものである。
しかしながら、この推測は必ずしも正しくない。次の例がその反例である。
\begin{bmatrix} 4 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \end{bmatrix}
しかし、対角優位行列に対して、条件 (6.2.1) が非特異性を保証するための有用な追加条件が存在する。そして、それらの条件はグラフ理論における非常に興味深い概念へとつながる。
基本的な観察として、もし行列 \(A\) が対角優位であるならば、原点(0)はいかなるゲルシュゴリンの円盤の内部にも存在しえないという事実がある。
行列解析の総本山

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行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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