[行列解析5.7.10]定理: プレノルムとスペクトル半径の関係

5.7.10

定理 5.7.10. \(f\) が \(M_n\) 上のプレノルム、特にベクトルノルムであるならば、すべての \(A \in M_n\) に対して次が成り立つ:

\lim_{k \to \infty} \bigl[ f(A^k) \bigr]^{1/k} = \rho(A)

証明. \(\| \cdot \|\) を \(M_n\) 上の行列ノルムとし、不等式 (5.7.9) を考える。この不等式から次が得られる:

C_m^{1/k} \, \|A^k\|^{1/k} \leq \bigl[ f(A^k) \bigr]^{1/k} \leq C_M^{1/k} \, \|A^k\|^{1/k}

ここで \(k = 1, 2, 3, \ldots\) とする。すると \(C_m^{1/k} \to 1\)、\(C_M^{1/k} \to 1\)、さらに \(\|A^k\|^{1/k} \to \rho(A)\) (5.6.14より)が成り立つ。よって極限

\lim_{k \to \infty} \bigl[ f(A^k) \bigr]^{1/k}

が存在し、その値は \(\rho(A)\) であることが結論される。 ■

補足. 例5は、任意の \(M_n\) 上のノルムが行列ノルムと「同値」であるという第2の意味を示している。すなわち、ノルム \(\|\cdot\|_\infty\) の正のスカラー倍は行列ノルムとなる。これは偶然ではなく、任意のノルムは適切な正の定数を掛けることで行列ノルムとなる。この基本的な結果は、ノルム関数の連続性とその単位球のコンパクト性から導かれる。


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