[行列解析5.6.P31]

5.6.問題31

5.6.P31

前問の 4 問はいずれも \(p(z) = 0\) の根の絶対値の上限に関する問題であったが、これらは下限境界を得るためにも利用できる。もし \(p(z)\) が (5.6.45) で与えられ、\(a_0 \neq 0\) であれば、次の多項式を考える:

q(z) = \frac{1}{a_0} z^n p\left(\frac{1}{z}\right) \\
= z^n + \frac{a_1}{a_0} z^{n-1} + \frac{a_2}{a_0} z^{n-2} + \dots + \frac{a_{n-1}}{a_0} z + \frac{1}{a_0}

この \(q(z)\) の根は、\(p(z) = 0\) の根の逆数である。ここから \(q(z) = 0\) の上限境界を用いて、\(p(z) = 0\) の根 \(\tilde{z}\) の下限を次のように得られる。

Cauchy の下限:

|\tilde{z}| \ge \frac{|a_0|}{\max\left\{\begin{aligned}&1, |a_0| + |a_{n-1}|, |a_0| + |a_{n-2}|\\ &  \quad  , \dots, |a_0| + |a_1|\end{aligned}\right\}} \\
\ge \frac{|a_0|}{|a_0| + \max\{1, |a_{n-1}|, \dots, |a_1|\}}

Montel の下限:

|\tilde{z}| \ge \frac{|a_0|}{\max\{|a_0|, \\ 1 + |a_1| + \dots + |a_{n-1}|\}} \\
\ge \frac{|a_0|}{1 + |a_0| + |a_1| + \dots + |a_{n-1}|}

Carmichael と Mason の下限:

|\tilde{z}| \ge \frac{|a_0|}{\sqrt{1 + |a_0|^2 + |a_1|^2 + \dots + |a_{n-1}|^2}} \\
= \frac{|a_0|}{\sqrt{s + 1}}, \\
\quad s = |a_0|^2 + \dots + |a_{n-1}|^2

さらに (5.6.9(b)) および \(C(p)\) の最小特異値を用いると、より良い下限が得られる:

\begin{align}
|\tilde{z}| & \ge \frac{1}{2}  \sqrt{s+1 - \sqrt{(s+1)^2 - 4|a_0|^2}}  \notag \\
&= \frac{|a_0|}{\sigma_1(C(p))} \notag 
\end{align}

この境界は Carmichael と Mason の下限より優れている理由を説明せよ。境界 (5.6.50) と (5.6.51) を用いると、すべての根を含む円環領域を表すことができる。例えば \(p(z) = z^5 + 1\) の場合、この円環はどのようになるか。


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