5.5.1
定義 5.5.1
実または複素ベクトル空間 \(V\) 上のノルム \(\| \cdot \|\)、点 \(x \in V\)、および正の数 \(r > 0\) が与えられているとする。半径 \(r\) のボールとは次の集合である:
B_{\| \cdot \|}(r; x) = \{ y \in V : \|y - x\| \le r \}
ノルム \(\| \cdot \|\) の単位球は次の集合である:
B_{\| \cdot \|} = B_{\| \cdot \|}(1; 0) = \{ y \in V : \|y\| \le 1 \}
演習:
任意の \(r > 0\) と \(x \in V\) に対して、次が成り立つことを示せ:
B(r; x) = \{ y + x : y \in B(r; 0) \} = x + B(r; 0)
任意の点 \(x\) の周りのボールは、半径が同じゼロ周りのボールと同じ形状であり、単に点 \(x\) に平行移動されているだけである。単位球はノルムの幾何学的要約であり、斉次性の性質によりノルムを特徴付ける(実際には単位球の境界だけで十分である)。私たちの目標は、複素ベクトル空間 \(\mathbb{C}^n\) のどの部分集合があるノルムの単位球となり得るかを正確に決定することである。
演習:
\( \mathbb{R}^2 \) 上の l1, l2, l∞ ノルムの単位球をスケッチし、その極値点を特定せよ。これらの単位球の間に包含関係は存在するか? また、R2 上の任意の lp-ノルムの単位球の境界に必ず存在すべき点はどれか? 他の lp-ノルムの単位球もスケッチせよ。
演習:
もし \(\| \cdot \|_\alpha\) と \(\| \cdot \|_\beta\) が \(V\) 上のノルムであれば、次が成り立つ理由を説明せよ:
\|x\|_\alpha \le \|x\|_\beta \\ \text{すべての } x \in V \text{ に対して} \\ \iff B_{\| \cdot \|_\beta} \subset B_{\| \cdot \|_\alpha}
ノルムの自然な部分順序は、単位球の幾何学的包含関係として反映される。ノルムに正の定数を掛けると単位球はどう変化するか?
演習:
ノルム \(\| \cdot \|\) 上で、点 \(x \in V\) とスカラー \(\alpha\) が \(\|\alpha x\| = \|x\|\) を満たすとする。このとき \(x = 0\) であるか、あるいは \(|\alpha| = 1\) であることを示せ。もし \(x \neq 0\) なら、各半直線 \(\{\alpha x : \alpha > 0\}\) は単位球の境界と正確に1回交わることを結論せよ。
行列解析の総本山

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