5.1.1
実または複素ベクトル空間におけるノルムの4つの公理は次の通りである。
定義 5.1.1 \(V\) を体 \(F\)(\(F = \mathbb{R}\) または \(\mathbb{C}\))上のベクトル空間とする。写像 \(\|\cdot\| : V \to \mathbb{R}\) が、すべての \(x, y \in V\)、およびすべての \(c \in F\) に対して次を満たすとき、これをノルム(ベクトルノルムとも呼ばれる)という。
(1) \(\|x\| \geq 0\) (非負性)
(1a) \(\|x\| = 0 \iff x = 0\) (正定性)
(2) \(\|cx\| = |c| \, \|x\|\) (斉次性)
(3) \(\|x + y\| \leq \|x\| + \|y\|\) (三角不等式)
これら4つの公理は、平面におけるユークリッド長さのよく知られた性質の一部を表している。ユークリッド長さには、これら4つの公理からは導けない追加的な性質があり、その一例が平行四辺形の恒等式 (5.1.9) である。三角不等式は、ノルムの劣加法性を表している。
\(\|\cdot\|\) が実または複素ベクトル空間 \(V\) 上のノルムであるとき、正定性と斉次性の公理 (1a) と (2) によって、任意の非零ベクトル \(x\) は正規化され、単位ベクトルを作ることができる。
u = \|x\|^{-1} x, \quad \|u\| = \|\|x\|^{-1} x\| = \|x\|^{-1} \|x\| = 1
与えられたノルム \(\|\cdot\|\) を備えた実または複素ベクトル空間 \(V\) を、ノルム線形空間(ノルムベクトル空間)という。
写像 \(\|\cdot\| : V \to \mathbb{R}\) が (5.1.1) の公理 (1), (2), (3) を満たすとき、これをセミノルムという。非零ベクトルのセミノルムが 0 になることもある。
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