[行列解析3.4.1.9]

3.4.1.9

系 3.4.1.9. 任意の \( A \in M_n \) に対して、\( A\overline{A} \) は \( \overline{A}A \) に相似であり、さらに実行列にも相似である。

証明. 定理 3.2.11.1 により、\( A\overline{A} \) と \( \overline{A}A \) の非特異ジョルダン構造は同じであることが保証される。行列とその複素共役は同じ階数をもつので、任意の \( k = 1, 2, \ldots \) に対して

\operatorname{rank}\!\big((A\overline{A})^k\big) 
= \operatorname{rank}\!\big((\overline{A}A)^k\big)

が成り立つ。したがって、\( A\overline{A} \) と \( \overline{A}A \) の冪零ジョルダン構造も同じであり、両者は相似である。さらに \( \overline{A}A = A\overline{A} \) であるので、(3.4.1.7) により \( A\overline{A} \) は実行列に相似である。

各複素正方行列 \( A \) は、複素相似変換によって複素上三角行列 \( T \) (2.3.1)に相似である。もし \( A \) が対角化可能であれば、複素相似変換によって \( A \) は対角行列に相似であり、その対角成分は \( T \) の対角成分、すなわち \( A \) の固有値である。では、この事実の「実」版は何であろうか?

各実正方行列 \( A \) は、実相似変換によって実上準三角行列 \( T \) (2.3.5)に相似である。ただし、その対角に現れる \( 2 \times 2 \) ブロックは (2.3.5a)、すなわち (3.4.1.3) と同じ特殊な形をもつ。もし \( A \) が対角化可能であれば、(3.4.1.5) の系により、\( A \) は実相似変換によって実準対角行列に相似であり、その対角ブロックは \( T \) の対角ブロックと同じである。


参考:Matrix Analysis:Second Edition ISBN 0-521-30587-X.(当サイトは公式と無関係です)

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