0.7.7 可換性、反可換性、およびブロック対角行列
2つの行列 \( A, B \in M_n(F) \) が 可換であるとは、\( AB = BA \) が成り立つことを意味します。可換性は一般的ではありませんが、重要な特例がよく見られます。
次のような行列 \( \Gamma = [\gamma_{ij}]_{i,j=1}^s \in M_n(F) \) を考えます。ここで、\( \gamma_{ij} = 0 \)(ただし \( i \neq j \))、かつ各 \( i = 1, \ldots, s \) に対し \( \gamma_{ii} = \lambda_i I_{n_i} \) とし、\( \lambda_i \neq \lambda_j \) ならば \( i \neq j \) とします。
\( \Gamma \) に合わせて行列 \( B = [B_{ij}]_{i,j=1}^s \in M_n(F) \) を同様に分割すると、\( \Gamma B = B\Gamma \) が成り立つのは、任意の \( i,j = 1, \ldots, s \) に対して、
(\lambda_i - \lambda_j) B_{ij} = 0
が成り立つとき、すなわち \( i \neq j \) ならば \( B_{ij} = 0 \) のとき、かつそのときに限ります。したがって、\( \Gamma \) が \( B \) と可換であるのは、\( B \) が \( \Gamma \) に整合したブロック対角行列である場合に限ります(詳細は (0.9.2) を参照)。
2つの行列 \( A, B \in M_n(F) \) が 反可換であるとは、\( AB = -BA \) が成り立つことを意味します。たとえば、以下の行列
\begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{bmatrix}, \quad \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{bmatrix}
は反可換です。
行列解析の総本山

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行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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