7.7.12 半正定値行列に対する共役行列の不等式の等価条件
系7.7.12
\( A \in M_n \) を半正定値行列、\( B \in M_n \) をエルミート行列とする。次の4つの条件は互いに同値である。
(a) 任意の \( x \in \mathbb{C}^n \) に対して、
x^* A x \ge |x^* B x|
(b) 任意の \( x, y \in \mathbb{C}^n \) に対して、
x^* A x + y^* A y \ge 2 |x^* B y|
(c) 次のブロック行列 \( H \) が半正定値である:
H =
\begin{bmatrix}
A & B \\
B & A
\end{bmatrix} \succeq 0
(d) エルミート縮小写像 \( X \in M_n \) が存在して、
B = A^{1/2} X A^{1/2}
が成り立つ。
さらに、\( A \) が正定値である場合、次の条件も (a) と同値である:
\rho(A^{-1} B) \le 1
証明
(a) ⇒ (b):任意の \( x, y \in \mathbb{C}^n \) に対して、(a) の不等式、三角不等式、及び B のエルミート性を用いると次が成り立つ:
2(x^* A x + y^* A y) = (x + y)^* A (x + y) + (x - y)^* A (x - y) \ge |(x + y)^* B (x + y)| + |-(x - y)^* B (x - y)| \ge |(x + y)^* B (x + y) - (x - y)^* B (x - y)| = 4 |x^* B y|
(b) ⇒ (c) ⇒ (d) ⇒ (a):前定理の A = C および B = B∗ と置く場合と同様である。各 ε > 0 に対して \((A + \varepsilon I)^{-1/2} B (A + \varepsilon I)^{-1/2}\) がエルミートであることから、定理 (7.7.9) により X をエルミートと選ぶことができる。
(e) ⇔ (c):前定理では A = C および B = B∗ の場合に (e) は \(\rho(A^{-1} B)^2 \le 1\) となる。
このコローラリーは、正の半定値行列の場合における基本表現 (7.7.3(a)) のバージョンを提供する。
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