7.1.5 半正定値および正定値行列の固有値・行列式・小行列式の符号
系 7.1.5. \( A \in M_n \) が半正定値(それぞれ正定値)行列であるとする。このとき、\(\mathrm{tr}\,A\)、\(\det A\)、および \(A\) の主小行列式(principal minors)はすべて非負(それぞれ正)である。さらに、\(\mathrm{tr}\,A = 0\) であるのは、かつその場合に限り \(A = 0\) である。
証明
\(A\) のトレースは、その固有値の総和である。これらの固有値はすべて非負(それぞれ正)なので、その総和が 0 であるなら、各固有値も 0 でなければならない。したがって、対角化可能な行列 \(A\) は零行列である(式 (1.3.4) を参照)。
また、\(A\) の行列式は固有値の積であり、すべての固有値が非負であるため、行列式も非負である。さらに、主小行列式は主小行列(principal submatrix)の行列式であり、これは非負または正の因子の積となる(式 (7.1.2) を参照)。
演習
もし \(A \in M_n\) が負定値行列であるなら、次を説明せよ: \(A\) の固有値およびトレースは負であり、また \(\det A\) は \(n\) が奇数のとき負、偶数のとき正である。
次に、エルミート行列
A = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{bmatrix}
を考える。非零ベクトル \(x\) であって、\(x^{*} A x = 0\) だが \(A x \ne 0\) となるものを示せ。
次に示す結果は、上の演習で見られたような現象が半正定値行列では起こり得ないことを示している。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
コメント