[行列解析4.3.P11]行列の行長と特異値の大小関係

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.3.P11

4.3.問題11

\(A = [a_{ij}] \in M\_n\) とする。

「小さい」列や行を持つなら、「小さい」特異値も持つことを示す以下の議論の詳細を与えよ。

特異値の2乗を大きい順に並べたものを \(\sigma_1^2 \geq \cdots \geq \sigma_n^2\) とする(これは \(AA^*\) の固有値である)。

また、行のユークリッド長の2乗を大きい順に並べたものを \(R_1^2 \geq \cdots \geq R_n^2\) とする(これは \(AA^*\) の主対角成分を並べ替えたものである)。このとき、すべての \(k=1,\ldots,n\) に対して次が成り立つ理由を説明せよ。

\sum_{i=n-k+1}^n R_i^2 \geq \sum_{i=n-k+1}^n \sigma_i^2

列のユークリッド長に関しても同様の不等式が成り立つ。

さらに、もし \(A\) が正規行列であるなら、\(A\) の固有値について何を結論できるか?

ヒント

\(AA^*\) は半正定値エルミート行列であり、その固有値が \(A\) の特異値の2乗である。

また、\(AA^*\) の対角成分は \(A\) の各行ベクトルのユークリッド長の2乗になる。

前問で示したように、エルミート行列の対角成分は固有値の凸結合で表される。そこから、対角成分の小さい方の和は、固有値の小さい方の和以上になることを示せばよい。

正規行列の場合には、特異値は固有値の絶対値に一致することを用いる。

解答例

\(H=AA^\*\) とおく。

\(H\) はエルミート半正定値行列であり、その固有値は \(A\) の特異値の2乗

\sigma_1^2 \geq \sigma_2^2 \geq \cdots \geq \sigma_n^2 \geq 0

である。

さらに、\(H\) の対角成分は

h_{ii}
=
\sum_{j=1}^n a_{ij}\overline{a_{ij}}
=
\sum_{j=1}^n |a_{ij}|^2
=
R_i^2

である。

\(H\) はエルミート行列なので、あるユニタリ行列 \(U\) を用いて

H
=
U
\operatorname{diag}(\sigma_1^2,\ldots,\sigma_n^2)
U^*

と対角化できる。

前問の結果より、対角成分ベクトル

(R_1^2,\ldots,R_n^2)^{\top}

は、固有値ベクトル

(\sigma_1^2,\ldots,\sigma_n^2)^{\top}

に二重確率行列を掛けたものになる。

したがって、対角成分ベクトルは固有値ベクトルによって majorize される。 すなわち、小さい方から \(k\) 個の和について

\sum_{i=n-k+1}^n R_i^2
\geq
\sum_{i=n-k+1}^n \sigma_i^2
\qquad
(k=1,\ldots,n)

が成り立つ。

同様に、列ベクトルのユークリッド長を

C_1^2 \geq \cdots \geq C_n^2

と並べると、\(A^*A\) の対角成分が列長の2乗であり、その固有値も同じく \(\sigma_1^2,\ldots,\sigma_n^2\) であるから、

\sum_{i=n-k+1}^n C_i^2
\geq
\sum_{i=n-k+1}^n \sigma_i^2
\qquad
(k=1,\ldots,n)

も成り立つ。

さらに、\(A\) が正規行列なら、

AA^*=A^*A

であるから、\(A\) の特異値は \(A\) の固有値の絶対値に一致する。

したがって、固有値を絶対値の大きい順に

|\lambda_1|
\geq
\cdots
\geq
|\lambda_n|

と並べれば、

\sum_{i=n-k+1}^n R_i^2
\geq
\sum_{i=n-k+1}^n |\lambda_i|^2

および

\sum_{i=n-k+1}^n C_i^2
\geq
\sum_{i=n-k+1}^n |\lambda_i|^2

がすべての \(k\) に対して成り立つ。

[行列解析4.3]エルミート行列に関する固有値の不等式
この節の目次4.3.1 定理(ヴェイアの定理)4.3.3 系4.3.5 系4.3.7 系4.3.9 系4.3.12 系4.3.15 系4.3.17 定理(Cauchy)4.3.21 定理4.3.26 定理4.3.28 定理4.3.34 系4...


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