[行列解析3.5]三角因子分解と標準形

3.標準形と三角因子分解

3.5 この節の目次

  • 3.5.1

3.5 三角因子分解と標準形

線形方程式系 \(Ax=b\) において、係数行列 \(A \in M_n\) が非特異な三角行列(0.9.3)であるならば、一意解 \(x\) の計算は非常に容易である。例えば、\(A=[a_{ij}]\) が上三角かつ非特異である場合、すべての対角要素 \(a_{ii}\neq 0\) なので、後退代入を用いることができる。すなわち、まず

a_{nn} x_n = b_n

から \(x_n\) が決定される。その後、次の式

a_{n-1,n-1} x_{n-1} + a_{n-1,n} x_n = b_{n-1}

によって \(x_n\) が既知であり、かつ \(a_{n-1,n-1}\neq 0\) なので \(x_{n-1}\) が決定される。この方法を繰り返し、行列 \(A\) の行を上に進みながら \(x_{n-2}, x_{n-3}, \ldots, x_2, x_1\) を順に決定していく。

演習問題. 係数行列 \(A \in M_n\) が非特異な下三角行列であるとき、前進代入を用いた \(Ax=b\) の解法を説明せよ。

もし \(A \in M_n\) が三角行列でなくても、\(A\) が非特異であり、さらに \(A=LU\) と因数分解できるならば(ここで \(L\) は下三角行列、\(U\) は上三角行列)、前進代入と後退代入を組み合わせて \(Ax=b\) を解くことができる。すなわち、まず

Ly = b

を前進代入で解き、次に

Ux = y

を後退代入で解くことで \(x\) を得る。


参考:Matrix Analysis:Second Edition ISBN 0-521-30587-X.(当サイトは公式と無関係です)

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