3.2.7
3.2.7 対角化可能部分 + 冪零部分:ジョルダン分解。任意のジョルダンブロックについて、次の恒等式が成り立つ。
J_k(\lambda) = \lambda I_k + J_k(0)
\left(J_k(0)\right)^k = 0
したがって、任意のジョルダンブロックは対角行列と冪零行列の和として表される。
より一般に、ジョルダン行列 (3.2.1.1) は次のように書ける。
J = D + N
ここで、\(D\) は \(J\) と同じ主対角成分をもつ対角行列であり、\(N = J - D\) である。行列 \(N\) は冪零行列であり、\(k\) を \(J\) の最大ジョルダンブロックのサイズとすると、\(N^k = 0\) が成り立つ。これは、\(N\) の固有値 \(0\) の指数に等しい。
さらに、もし \(A \in M_n\) であり、\(A = SJS^{-1}\) がそのジョルダン標準形であるならば、次が成り立つ。
A = S(D+N)S^{-1} = SDS^{-1} + SNS^{-1} = A_D + A_N
ここで、\(A_D\) は対角化可能であり、\(A_N\) は冪零である。さらに、\(D\) と \(N\) は共にブロック対角行列であり、\(D\) の対角ブロックはスカラー行列であるため、次が成り立つ。
A_D A_N = A_N A_D
もちろん、\(A = A_D + A_N\) に対しても \(A_D\) と \(A_N\) は可換である。
以上の議論により、ジョルダン分解の存在が確立される。すなわち、任意の複素正方行列は可換な2つの行列の和として表される。そのうち一方は対角化可能であり、もう一方は冪零である。ジョルダン分解の一意性については (3.2.P18) を参照。
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