7.3.6補題:行または列を削除した行列の特異値の交錯
\( A \in M_{n,m} \) とし、 \( q = \min\{m, n\} \) とする。行列 \( \hat{A} \) を、\( A \) の任意の1つの列または行を削除して得られる行列とする。\( A \) の特異値を \( \sigma_1 \ge \cdots \ge \sigma_q \)、\( \hat{A} \) の特異値を \( \hat{\sigma}_1 \ge \cdots \ge \hat{\sigma}_q \) とする。ただし、もし \( n \ge m \) で列を削除した場合、または \( n \le m \) で行を削除した場合には \( \hat{\sigma}_q = 0 \) と定義する。このとき次の関係が成り立つ。
\sigma_1 \ge \hat{\sigma}_1 \ge \sigma_2 \ge \hat{\sigma}_2 \ge \cdots \ge \sigma_q \ge \hat{\sigma}_q
(証明)行列 \( A \) に対して次のような行列を考える。
\mathcal{A} = \begin{bmatrix} 0 & A \\ A^{*} & 0 \end{bmatrix}
\( A \) の行 \( i \) を削除することは、\( \mathcal{A} \) の行 \( i \) と列 \( i \) を削除することに対応する。 同様に、\( A \) の列 \( j \) を削除することは、\( \mathcal{A} \) の行 \( n + j \) と列 \( n + j \) を削除することに対応する。 これらの削除を行った結果の行列を \( \mathcal{A}_d \) とする。
式 (4.3.17) により、\( \mathcal{A}_d \) の固有値は \( \mathcal{A} \) の固有値の間に交錯(interlace)することが保証される。 前の定理によって、\( \mathcal{A} \) と \( \mathcal{A}_d \) の固有値の間の交錯関係が、上記の不等式(7.3.7)を含むことがわかる。
(演習)上の系の証明の詳細を示せ。
次に示すコーラント–フィッシャーの定理の類似形は、エルミート行列の固有値と任意の行列の特異値との間に密接な論理的関係があることを示す別の例である。
行列解析の総本山

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