[行列解析7.6.5]定理:半正定値・正定値エルミート行列の対角化と複素対称行列の応用

7.6.半正定値・正定値エルミート行列の対角化と複素対称行列の応用

定理7.6.5.

\(A, B \in M_n\) とする。もし \(A\) が正定値で \(B\) が複素対称行列であるなら、非特異行列 \(S \in M_n\) が存在して、\(A = S I S^\ast\) および \(B = S \Lambda S^T\) と表せる。ここで \(\Lambda\) は非負の対角行列である。\(\Lambda^2\) の主対角成分は、対角化可能な行列 \(A^{-1} B \overline{A}^{-1} \overline{B}\) の固有値である。

証明.

非特異行列 \(R \in M_n\) を選んで \(R^{-1} A R^{-\ast} = I\) とする。(4.4.4(c)) を用いて、単位行列 \(U \in M_n\) を選び、\(U^\ast R^{-1} B R^{-T} \overline{U} = \Lambda\) が非負の対角行列となるようにする。ここで \(S = R U\) とおく。すると

S^{-1} A S^{-\ast} = U^\ast R^{-1} A R^{-\ast} U = U^\ast I U = I
S^{-1} B S^{-T} = U^\ast R^{-1} B R^{-T} \overline{U} = \Lambda

二つ目の主張は次の計算から確認できる:

A^{-1} B \overline{A}^{-1} \overline{B} = (S^{-\ast} S^{-1})(S \Lambda S^T)(S^{-T} \overline{S}^{-1})(\overline{S} \Lambda S^\ast) = S^{-\ast} \Lambda^2 S^\ast

この結果は複素関数論に応用できる。(4.4) で議論された単射解析関数の Grunsky 不等式は、正定値エルミート行列と複素対称行列によって生成される二次形式の間の不等式である。

次の結果は、定理7.6.4(a) の応用である。


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