[行列解析7.3.5]系:特異値の摂動不等式

7.3.5系:特異値の摂動不等式

\(A, B \in M_{n,m}\) とし、\(q=\min\{m,n\}\) とする。\(A\) の特異値を降順に並べて \(\sigma_1(A)\ge\cdots\ge\sigma_q(A)\)、\(B\) の特異値を降順に並べて \(\sigma_1(B)\ge\cdots\ge\sigma_q(B)\) とする。このとき次が成り立つ。

(a) 任意の \(i=1,\dots,q\) について

\left|\sigma_i(A)-\sigma_i(B)\right|\le \|A-B\|_2

(b) 特異値差の二乗和について

\sum_{i=1}^q \bigl(\sigma_i(A)-\sigma_i(B)\bigr)^2 \le \|A-B\|_F^2

証明(概要)

(a) を示すために \(E=A-B\) とおき、エルミート行列

\mathcal{A} = \begin{bmatrix}0 & A \\ A^{*} & 0\end{bmatrix},\qquad
\mathcal{E} = \begin{bmatrix}0 & E \\ E^{*} & 0\end{bmatrix}

について (6.3.4.1)(Weyl 型の固有値摂動不等式)を適用すると、\(\mathcal{A}\) の固有値と \(\mathcal{A}+\mathcal{E}\) の固有値の差が \(\|\mathcal{E}\|_2=\|E\|_2=\|A-B\|_2\) 以下であることから、対応する正の固有値すなわち特異値に対して (a) の不等式が従う。
(b) は Hermitian Hoffman–Wielandt の定理((6.3.9))を同様に \(\mathcal{A}\) と \(\mathcal{A}+\mathcal{E}\) に適用することにより、特異値差の二乗和が \(\|\mathcal{E}\|_F^2=\|A-B\|_F^2\) を上界とすることを得る((6.3.8) の直後の演習参照)。

演習:

上記の (a)、(b) の各部分の詳細な導出を補完せよ。


行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました