3.3.1定理
定理 3.3.1.
\( A \in M_n \) が与えられたとき、\( A \) を消去する最小次数の一意なモニック多項式 \( q_A(t) \) が存在する。
\( q_A(t) \) の次数は最大で \( n \) である。
もし \( p(t) \) が \( p(A) = 0 \) を満たす任意のモニック多項式であれば、\( q_A(t) \) は \( p(t) \) を割り切る。
すなわち、あるモニック多項式 \( h(t) \) に対して \( p(t) = h(t)q_A(t) \) が成り立つ。
証明.
\( A \) を消去するモニック多項式の集合には、次数 \( n \) の \( p_A(t) \) が含まれている。ここで、
m = \min \left\{ k : \begin{aligned} & p(t) \text{ は次数 } k \text{の} \\ & \text{モニック多項式で } \\ & p(A) = 0 \end{aligned} \right\}
とおくと、必ず \( m \leq n \) である。
任意の \( A \) を消去するモニック多項式 \( p(t) \) と、\( A \) を消去する次数 \( m \) のモニック多項式 \( q(t) \) を考える。
このとき \( p(t) \) の次数は \( m \) 以上である。
ユークリッドの互除法により、モニック多項式 \( h(t) \) と次数が \( m \) より小さい多項式 \( r(t) \) が存在して、
p(t) = q(t)h(t) + r(t)
と書ける。
ここで
0 = p(A) = q(A)h(A) + r(A) \\= 0 \cdot h(A) + r(A)
が成り立つので、\( r(A) = 0 \) となる。もし \( r(t) \) が零多項式でなければ、正規化して次数が \( m \) より小さいモニックな消去多項式を得ることができ、これは矛盾である。
したがって \( r(t) \) は零多項式であり、よって \( q(t) \) は \( p(t) \) を割り切り、その商は \( h(t) \) である。
もし \( A \) を消去する最小次数のモニック多項式が 2 つ存在したと仮定すると、この議論により、それぞれが他方を割り切ることになる。
次数が同じであるため、一方は他方の定数倍であるはずである。
しかし両者がモニックであるため、定数倍は \( +1 \) でなければならない。したがって両者は完全に一致する。
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