[行列解析2.6.p37]異なる特異値とSVDの一意性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.6.P37

2.6.問題37

\(A \in M_n\) が異なる特異値を持つとする。

\(A = V \Sigma W^*\) および \(A = \hat V \Sigma \hat W^*\) が特異値分解である。

(a) \(A\) が正則の場合、\(\hat V = V D\)、\(\hat W = W D\) となる対角ユニタリ行列 \(D\) が存在する理由を説明せよ。

(b) \(A\) が特異の場合、\(\hat V = V D\)、\(\hat W = W \tilde D\) となる対角ユニタリ行列 \(D\) と \(\tilde D\) が存在し、両者は高々一つの対角要素が異なる理由を説明せよ。

ヒント

特異値がすべて異なるとき、\(A^*A\) および \(AA^*\) の固有値もすべて異なり、それぞれの固有空間は一次元である。
したがって対応する固有ベクトルは位相因子(絶対値1の複素数)を除いて一意に定まる。

特異値分解 \(A = V \Sigma W^*\) では、\(W\) の列は \(A^*A\) の固有ベクトル、\(V\) の列は \(AA^*\) の固有ベクトルであることを用いる。

解答例

\(A = V \Sigma W^* = \hat V \Sigma \hat W^*\) がともに特異値分解であり、特異値はすべて異なるとする。

まず \( A^*A = W \Sigma^2 W^* \), \( A^*A = \hat W \Sigma^2 \hat W^* \) である。

\(\Sigma^2\) の対角成分は互いに異なるから、\(A^*A\) の固有値もすべて異なり、各固有空間は一次元である。したがって \(\hat W\) の各列ベクトルは \(W\) の対応する列ベクトルに絶対値1の複素数を掛けたものになる。

ゆえに対角ユニタリ行列 \(D\) が存在して \( \hat W = W D \) と書ける。

(a) \(A\) が正則ならば、すべての特異値は正である。このとき \( V = A W \Sigma^{-1} \), \( \hat V = A \hat W \Sigma^{-1} \) であるから、

\hat V
=
A (W D) \Sigma^{-1}
=
(A W \Sigma^{-1}) D
=
V D

となる。 したがって \( \hat V = V D \), \( \hat W = W D \) を満たす対角ユニタリ行列 \(D\) が存在する。

(b) \(A\) が特異の場合、零特異値が存在する。正の特異値に対応する部分については (a) と同様に一次元固有空間であるから、対応する対角成分は一致する。

一方、零特異値に対応する部分空間は \(\ker A\) および \(\ker A^*\) に対応し、その次元は \(n-r\) である。特異値がすべて異なるという仮定より、零特異値の重複度は高々1である。

したがって零特異値に対応する固有空間も一次元であり、その部分については \(W\) と \(\hat W\) の間に位相因子の違いが生じうる。同様に \(V\) と \(\hat V\) の間にも位相因子の違いが生じうる。

ゆえに対角ユニタリ行列 \(D\) と \(\tilde D\) が存在して \( \hat V = V D \), \( \hat W = W \tilde D \) と書ける。

正の特異値に対応する対角成分については (a) と同様に一致しなければならないので、\(D\) と \(\tilde D\) が異なりうるのは零特異値に対応する成分のみである。

したがって両者は高々一つの対角要素が異なる。


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