[行列解析2.1.p28]平面回転による実行行列の三角化と分解

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.1.p28

2.1.問題28

実行列 \( A \in M_{n,m}(\mathbb{R}) \) (\( n \geq m \))について:

(a) 有限個の平面回転行列 \( U_1, \ldots, U_N \) を構成し、

U_N \cdots U_1 A =
\begin{bmatrix}
B \\
0
\end{bmatrix}

とし、ここで \( B = [b_{ij}] \in M_m(\mathbb{R}) \) は上三角行列、各対角成分 \( b_{11}, \ldots, b_{m-1,m-1} \) は非負であることを説明せよ。

(b) この上三角行列への変換が、\( N = m(n - m + 1)/2 \) 個の平面回転で可能である理由を説明せよ。ただし、いくつかは恒等変換である場合があり、非自明な回転は \( N \) 未満でもよいことに注意すること。

(c) (a) を用いて、任意の実正方行列 \( A \in M_n(\mathbb{R}) \) は次のように分解できることを証明せよ:

A = U_1 \cdots U_N R
\quad
(N = n(n-1)/2)

ここで、各 \( U_i \) は平面回転、\( R = [r_{ij}] \) は上三角行列、\( r_{11}, \ldots, r_{n-1,n-1} \) は非負(ただし必ずしも \( r_{nn} \) ではない)である。

ヒント

平面回転行列(Givens回転)を用いると、特定の2つの成分だけに作用して一方の成分を0にできる。

列ごとに下から順に成分を消去する手順により、行基本変形と同様に上三角形の形を得ることができる。

回転は直交変換であり、ノルムや直交性を保つ点が重要である。非負の対角成分は、必要に応じて回転の符号を調整することで実現できる。

解答例

(a) まず \( n \geq m \) とする。平面回転行列とは、標準基底のある2次元部分空間上で回転を行い、それ以外の成分には影響を与えない直交行列である。このような回転を順に適用して、行列 \( A \) の特定の成分を0にしていく。

具体的には、第1列の要素について \( a_{11} \) を残し、それより下の成分 \( a_{21},\ldots,a_{n1} \) を順に0にする。各消去は対応する2つの成分に作用する平面回転により実現される。同様にして第2列以降についても、すでに得られた0を壊さないようにしながら対角成分の下側を順に0にしていく。こうして得られる直交行列の積を

U_N \cdots U_1

と書くと、得られる行列は次の形になる。

U_N \cdots U_1 A =
\begin{bmatrix}
B \\
0
\end{bmatrix}

ここで \( B \in M_m(\mathbb{R}) \) は上三角行列である。対角成分 \( b_{ii} \) については、必要であれば各列の最後の回転の符号を調整することで \( b_{11},\ldots,b_{m-1,m-1} \) を非負にできる。この操作は上三角性を保ったまま行えるので、条件を満たす \( B \) が構成できる。

(b) 次に必要な平面回転の個数を考える。上述の手順では、対角成分の下にある成分を順に0にしていく。列 \( j \) において、対角成分 \( b_{jj} \) の下側には \( n-j \) 個の成分があるが、下 \( n-m \) 行は最終的にすべて0となる行であり、上三角形の条件から独立に現れる非対角成分の個数は

N = \sum_{j=1}^{m} (n-m+1-j+ j-1) = \frac{m(n-m+1)}{2}

となる。すなわち、消去すべき独立な成分の個数が \( m(n-m+1)/2 \) 個であり、各平面回転は1つの成分を0にするため、同じ数の回転で三角化が可能である。いくつかの成分は初めから0である場合もあり、そのときは恒等変換に相当する回転でよいので、非自明な回転の個数はこれより少なくてもよい。

(c) \( A \in M_n(\mathbb{R}) \) を正方行列とする。このとき \( n=m \) として (a) の結果を用いると、

U_N \cdots U_1 A = R

なる上三角行列 \( R \) が得られる。したがって

A = U_1 \cdots U_N R

が成り立つ。

ここで \( n=m \) を前項の式に代入すると

N = \frac{n(n-1)}{2}


となる。

さらに、(a) と同様に最後の回転の符号を調整することにより、上三角行列 \( R = [r_{ij}] \) の対角成分 \( r_{11},\ldots,r_{n-1,n-1} \) を非負にできる(ただし \( r_{nn} \) は必ずしも非負である必要はない)。

これで主張は示された。以上より、任意の実正方行列は平面回転の積と上三角行列の積として表される。



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