2.6.P30
2.6.問題30
(0.4.6(f))
もし \( A \in M_{m,n}(F) \)、\( \operatorname{rank}(A) = k \) であれば、正則行列 \( S \in M_m(F) \)、\( T \in M_n(F) \) が存在して、
A = S \begin{bmatrix} I_k & 0 \\ 0 & 0 \end{bmatrix} Tと表されます。
特異値分解を用いて、複素行列に対する (0.4.6(f)) を確認せよ:
\(A \in M_{m,n}\) のランクが r であることは、非特異行列 \(S \in M_m\) および \(T \in M_n\) が存在して \(A = S \begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} T\) となることと同値である。
ヒント
複素行列 \(A \in M_{m,n}\) に対しては特異値分解が存在し、\(A = U \Sigma V^*\) と書ける。
ここで \(U \in M_m\)、\(V \in M_n\) はユニタリ行列、\(\Sigma\) は対角に特異値を並べた行列である。
ランクが \(r\) であれば、正の特異値はちょうど \(r\) 個である。
この対角部分を適切な可逆行列で調整すれば、\(I_r\) を含む標準形に変形できる。
解答例
まず \(A \in M_{m,n}\) のランクが \(r\) であるとする。複素行列に対する特異値分解より、ユニタリ行列 \(U \in M_m\)、\(V \in M_n\) が存在して
A = U \Sigma V^*
と表される。ここで \(\Sigma\) は
\Sigma =
\begin{pmatrix}
\sigma_1 & & & \\
& \ddots & & \\
& & \sigma_r & \\
& & & 0 \\
& & & \\
\end{pmatrix}
の形をしており、\(\sigma_1,\dots,\sigma_r > 0\)、それ以外は 0 である。
ここで
D =
\begin{pmatrix}
\sigma_1^{-1} & & & \\
& \ddots & & \\
& & \sigma_r^{-1} & \\
& & & I_{m-r}
\end{pmatrix}
を考えると、\(D\) は可逆であり、
D \Sigma =
\begin{pmatrix}
I_r & 0 \\
0 & 0
\end{pmatrix}
となる。したがって
A
= U \Sigma V^*
= (U D^{-1})
\begin{pmatrix}
I_r & 0 \\
0 & 0
\end{pmatrix}
V^*
と書ける。ここで \(S = U D^{-1} \in M_m\)、\(T = V^* \in M_n\) とおけば、\(S\) と \(T\) はともに非特異行列であり、
A = S
\begin{pmatrix}
I_r & 0 \\
0 & 0
\end{pmatrix}
T
が得られる。
逆に、このような表示が存在すれば、中央の行列のランクが \(r\) であり、非特異行列による左右からの乗法はランクを変えないので、\(\mathrm{rank}(A)=r\) である。
以上より、\(A\) のランクが \(r\) であることと、非特異行列 \(S,T\) が存在して \(A = S \begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} T\) と表せることは同値である。
行列解析の総本山
総本山の目次📚

記号の意味🔎




コメント