[行列解析2.5.P23]複素対称行列における正規性の違い

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P23

2.5.問題23

次の2つの行列はどちらも対称であるが、一方は正規であり他方は正規ではないことを示せ。

これは実対称行列と複素対称行列の重要な違いである。

 \begin{bmatrix} 1 & i \\ i & 1 \end{bmatrix}, \quad \begin{bmatrix} i & i \\ i & -1 \end{bmatrix}. 

ヒント

正規行列であるかどうかは \( AA^{*}=A^{*}A \) が成り立つかで判定する。

与えられた二つの行列はいずれも転置について対称であるが、随伴行列を計算し、積 \( AA^{*} \) と \( A^{*}A \) を比較することで正規性の有無が分かる。

解答例

まず \( A=\begin{bmatrix}1&i\\ i&1\end{bmatrix} \) を考える。

これは \( A^{\top}=A \) を満たすので複素対称行列である。

随伴行列は \( A^{*}=\begin{bmatrix}1&-i\\ -i&1\end{bmatrix} \) である。

直接計算すると

AA^{*}
=\begin{bmatrix}1&i\\ i&1\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}1&-i\\ -i&1\end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}2&0\\ 0&2\end{bmatrix}

同様に

A^{*}A
=\begin{bmatrix}1&-i\\ -i&1\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}1&i\\ i&1\end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}2&0\\ 0&2\end{bmatrix}

となり、\( AA^{*}=A^{*}A \) が成り立つ。したがってこの行列は正規行列である。

次に \( B=\begin{bmatrix} i&i\\ i&-1 \end{bmatrix} \) を考える。

この行列も \( B^{\top}=B \) を満たすので複素対称行列である。随伴行列は \( B^{*}=\begin{bmatrix} -i&-i\\ -i&-1 \end{bmatrix} \) である。

このとき

BB^{*}
=\begin{bmatrix} i&i\\ i&-1 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} -i&-i\\ -i&-1 \end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}2&1-i\\ -1-i&2\end{bmatrix}

一方で

B^{*}B
=\begin{bmatrix} -i&-i\\ -i&-1 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} i&i\\ i&-1 \end{bmatrix}
=\begin{bmatrix}2&-1-i\\ 1-i&2\end{bmatrix}

となり、\( BB^{*}\neq B^{*}B \) である。

したがってこの行列は正規ではない。

以上より、複素対称行列であっても正規であるとは限らないことが分かる。

これは実対称行列が常に正規であることとの重要な違いである。


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