[行列解析2.5.P10]可換な正規行列の和と積の正規性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P10

2.5.問題10

\(A, B \in M_n\) がともに正規行列であるとする。

もし \(A\) と \(B\) が可換なら、\(AB\) および \(A \pm B\) はいずれも正規行列であることを示せ。

逆はどうか。

次の例を確かめよ。

行列 \(A, B, AB, BA\) はいずれも正規行列だが、\(A\) と \(B\) は可換ではない。

 A = \begin{bmatrix} 1 & -1 \\[2pt] 1 & 1 \end{bmatrix}, \quad B = \begin{bmatrix} -1 & 1 \\[2pt] 1 & 1 \end{bmatrix}. 

 

ヒント

正規行列の定義は \( A^{*}A = AA^{*} \) である。

可換性 \( AB = BA \) を仮定すると、随伴行列との積の順序を整理でき、正規性の確認が容易になる。

逆については具体的な反例を直接計算で確かめる。

解答例

まず \( A, B \in M_n \) がともに正規行列で、かつ \( AB = BA \) が成り立つと仮定する。

このとき \( A^{*}A = AA^{*} \)、\( B^{*}B = BB^{*} \) であり、可換性から \( AB^{*} = B^{*}A \)、\( A^{*}B = BA^{*} \) も成り立つ。

(AB)^{*}(AB)
= B^{*}A^{*}AB
= B^{*}AA^{*}B
= A^{*}BB^{*}A
= A^{*}BA B^{*}
= (AB)(AB)^{*}

よって \( AB \) は正規行列である。

次に \( A \pm B \) について計算すると、

(A \pm B)^{*}(A \pm B)
= A^{*}A \pm A^{*}B \pm B^{*}A + B^{*}B

一方、

(A \pm B)(A \pm B)^{*}
= AA^{*} \pm AB^{*} \pm BA^{*} + BB^{*}

正規性と可換性より各項が一致するため、 \( (A \pm B)^{*}(A \pm B) = (A \pm B)(A \pm B)^{*} \) となり、\( A \pm B \) も正規行列である。

次に逆を考える。

すなわち \( AB \) や \( A \pm B \) が正規行列であっても、必ずしも \( A \) と \( B \) が可換とは限らない。

実際、次の行列を考える。

A =
\begin{pmatrix}
1 & -1 \\
1 & 1
\end{pmatrix},
\quad
B =
\begin{pmatrix}
-1 & 1 \\
1 & 1
\end{pmatrix}

直接計算すると、 \( A^{*}A = AA^{*} \)、\( B^{*}B = BB^{*} \) が成り立ち、\( A \) と \( B \) はともに正規行列である。

また、 \( AB \)、\( BA \) についても同様に正規行列であることが確認できる。

しかし実際に積を計算すると \( AB \neq BA \) であり、\( A \) と \( B \) は可換ではない。

したがって、「\( AB \) や \( A \pm B \) が正規行列である」ことから「\( A \) と \( B \) が可換である」ことは一般には従わない。

 


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