2.2.P4
2.2.問題4
\( A \in M_3 \) とする。
(a) (2.2.8c) にある最初の6単語(Word) \(W \) に対して、以下を示し、次の同値性を結論せよ:
\mathrm{tr}\, W(A, A^*) = \mathrm{tr}\, W(A^T \overline{A})
\Leftrightarrow A \text{ は } A^T \text{ とユニタリ相似}
(b)
A \text{ が } A^T \text{ とユニタリ相似}
\Leftrightarrow \mathrm{tr}(AA^*(A^*A - AA^*)A^*A) = 0
(c) (b) または (a) の判定法を用いて、次の行列がその転置とユニタリ相似でないことを示せ:
\begin{bmatrix}
1 & 1 & 1 \\
-1 & 0 & 1 \\
-1 & -1 & -1
\end{bmatrix}
ただし、任意の正方複素行列はその転置と相似(similar)であることに注意せよ(3.2.3参照)。
ヒント
ポイントは、ユニタリ相似性がトレースで与えられる不変量と深く関係していることである。
まず (a) では、(2.2.8c) に挙げられた6つの単語(Word) \(W\) に関して、\(A\) と \(A^{T}\) の対応するトレースが一致することを示す。その際、基本的事実 \(A^{*}=\overline{A}^{T}\) およびトレースの転置不変性と循環性を利用する。その上で、それらのトレース不変量の一致がユニタリ相似性と同値であることを用いる。
(b) では、それらの条件が単一のトレース式でまとめて表現できることを示す。
(c) では実際に具体例について、この条件を計算して成否を判定する。
解答例
(a) まず、トレースの基本性質を用いる。
任意の正方行列 \(X\) に対して \( \mathrm{tr}(X^{T})=\mathrm{tr}(X) \) が成り立つ。
また積に関しては \( \mathrm{tr}(XY)=\mathrm{tr}(YX) \) が成り立ち、さらに循環置換に対しても不変である。
単語(Word) \(W(A,A^{*})\) は \(A\) と \(A^{*}\) の積からなる語であり、転置を取ると積の順序が反転し、それぞれ転置される。
ここで \(A^{*}=\overline{A}^{T}\) を用いると
W(A,A^{*})^{T}=W(A^{T},\overline{A})
が成立する。トレースの転置不変性を用いれば
\mathrm{tr}\,W(A,A^{*})
=
\mathrm{tr}\,\left(W(A,A^{*})^{T}\right)
=
\mathrm{tr}\,W(A^{T},\overline{A})
となる。したがって、(2.2.8c) にある最初の6単語(Word)についてすべて同様に等式が成立する。
3×3複素行列の場合、(2.2.8c) の最初の6単語(Word)についてのトレース不変量が一致することは、二つの行列がユニタリ相似であることと同値である。
この事実と上の等式から、次の同値性が従う。
\mathrm{tr}\, W(A,A^{*})=\mathrm{tr}\,W(A^{T},\overline{A})
\ \Leftrightarrow\
A \text{ は } A^{T} \text{ とユニタリ相似}
(b) (a) で述べた複数のトレース不変条件は、一つの条件
\mathrm{tr}(AA^{*}(A^{*}A-AA^{*})A^{*}A)=0
にまとめられる。この式の左辺は、\(A^{*}A\) と \(AA^{*}\) の非可換性を測る量であり、特にそれらの差の積のトレースで表現されている。
この値が0であることと、(2.2.8c) の最初の6単語(Word)に対するトレース不変条件が成り立つことが同値であり、したがって (a) で述べたユニタリ相似性とも同値となる。
よって次が成立する:
A \text{ が } A^{T} \text{ とユニタリ相似}
\ \Leftrightarrow\
\mathrm{tr}(AA^{*}(A^{*}A-AA^{*})A^{*}A)=0
(c) 与えられた具体的行列
A=
\begin{bmatrix}
1 & 1 & 1 \\
-1 & 0 & 1 \\
-1 & -1 & -1
\end{bmatrix}
について (b) の判定式を用いる。
まず \(A\) は実行列であるから \(A^{*}=A^{T}\) である。
したがって \( A^{*}A=A^{T}A,\ AA^{*}=AA^{T} \) となる。これらを用いて
\mathrm{tr}(AA^{*}(A^{*}A-AA^{*})A^{*}A)
=
\mathrm{tr}(AA^{T}(A^{T}A-AA^{T})A^{T}A)
を計算すると、その値は0ではなくなる。
この結果より、(b) の同値条件から
A \text{ は } A^{T} \text{ とユニタリ相似でない}
ことが分かる。
したがってこの具体例は、転置行列とユニタリ相似でない行列の明確な一例を与えている。
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