[行列解析2.1.p18]QR分解に基づく直交基底と距離の性質

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.1.p18

2.1.問題18

\( A \in M_n \) を \( A = QR \) と分解し、列ごとに \( A = [a_1 \dots a_n] \)、\( Q = [q_1 \dots q_n] \)、\( R = [r_{ij}]_{i,j=1}^n \) とする。

  1. 各 \( k = 1, \dots, n \) に対し、\( \{q_1, \dots, q_k\} \) が \( \{a_1, \dots, a_k\} \) の張る部分空間の直交基底であることを示せ。
  2. 各 \( k = 2, \dots, n \) に対し、\( r_{kk} \) は \( a_k \) と \( \mathrm{span}\{a_1, \dots, a_{k-1}\} \) とのユークリッド距離であることを示せ。

ヒント

QR分解は列ベクトルに対するグラム・シュミットの直交化を行った結果であるとみなすことができる。

すなわち、各列 \( a_k \) をそれ以前に得られた直交ベクトル \( q_1,\dots,q_{k-1} \) に射影し、その残差を正規化して \( q_k \) を構成する。

列表示 \( a_k=\sum_{i=1}^{k} r_{ik}q_i \) を用いると張る空間の一致がわかる。

また、距離については直交射影から得られる残差ベクトルのノルムが距離そのものになることを用いる。

解答例

まず QR 分解 \( A=QR \) を列ごとに表すと次を得る。

a_k=\sum_{i=1}^{k} r_{ik} q_i \qquad (k=1,\dots,n)

ここで \(R\) は上三角行列であるので \(r_{ik}=0\) は \(i>k\) のときである。

この式より各 \(a_k\) は \(q_1,\dots,q_k\) の一次結合で表される。したがって

\mathrm{span}\{a_1,\dots,a_k\}\subset \mathrm{span}\{q_1,\dots,q_k\}

一方、グラム・シュミットの構成から各 \(q_j\) は \(a_1,\dots,a_j\) の一次結合で与えられる。したがって逆向きの包含

\mathrm{span}\{q_1,\dots,q_k\}\subset \mathrm{span}\{a_1,\dots,a_k\}

が成り立つ。よって両者は一致する。さらに \(Q\) の列ベクトルは互いに直交し長さ 1 に正規化されているので、\(\{q_1,\dots,q_k\}\) は直交規格化された基底であり、\(\{a_1,\dots,a_k\}\) の張る部分空間の直交基底となる。

次に \(r_{kk}\) の距離としての意味を示す。行列等式より

a_k=\sum_{i=1}^{k-1} r_{ik} q_i + r_{kk} q_k

ここで第1項は \(\mathrm{span}\{q_1,\dots,q_{k-1}\}=\mathrm{span}\{a_1,\dots,a_{k-1}\}\) への直交射影であり、第2項はその直交補成分である。

よって残差ベクトルを

\hat a_k = a_k-\sum_{i=1}^{k-1} r_{ik} q_i = r_{kk} q_k

とおくと、\(\hat a_k\) は \(\mathrm{span}\{a_1,\dots,a_{k-1}\}\) に直交する。

さらに \(q_k\) は単位長なので

\|\hat a_k\| = |r_{kk}|

が成り立つ。ところが \(\hat a_k\) は \(a_k\) と \(\mathrm{span}\{a_1,\dots,a_{k-1}\}\) との最短距離を与える直交差ベクトルであるから、そのノルムがユークリッド距離に等しい。したがって

\mathrm{dist}\!\left(a_k,\ \mathrm{span}\{a_1,\dots,a_{k-1}\}\right)=|r_{kk}|


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