2.1.p16
2.1.問題16
\( x, y \in \mathbb{R}^n \) が与えられた一次独立な単位ベクトルとし、\( w = x + y \) と定義する。
Palais 行列 \( P_{x,y} \) を次のように定義する:
P_{x,y} = I - \frac{2}{w^T w}ww^T + 2yx^T
以下を示せ:
- \( P_{x,y} = (I - \frac{2}{w^T w}ww^T)(I - 2xx^T) = U_w U_x \) は 2つの実ハウスホルダー行列の積であり、したがって実直交行列である。
- \(\det P_{x,y} = +1\) なので、これは常に正の回転行列(proper rotation)である。
- \( P_{x,y} x = y \)、かつ \( P_{x,y} y = -x + 2(x^T y)y \) である。
- \( z \in \mathbb{R}^n \) が \( x \) および \( y \) に直交しているとき、\( P_{x,y} z = z \)。
- \( P_{x,y} \) は \( \mathrm{span}\{x, y\}^\perp \) 上では恒等作用をし、2次元部分空間 \( \mathrm{span}\{x, y\} \) 上では正回転として作用し、\( x \) を \( y \) に写す。
- \( n = 3 \) のとき、\( P_{x,y} \) は \( x \) を \( y \) に写しつつ、\( x \times y \) を不変にする唯一の正回転行列である理由を説明せよ。
- \( P_{x,y} \) の固有値は \( x^T y \pm i \sqrt{1 - (x^T y)^2} = e^{\pm i\theta}, 1, \dots, 1 \) であり、ここで \( \cos\theta = x^T y \)。
ヒント
ベクトル \( x \) と \( y \) は単位長で一次独立であるので、これらが張る2次元部分空間とその直交補空間に分解して考える。
まずハウスホルダー変換 \( U_{x}=I-2xx^{T} \), \( U_{w}=I-\frac{2}{w^{T}w}ww^{T} \) を用いると、これらはどちらも実直交行列である。積
\( U_{w}U_{x} \) により \( x \) を \( y \) に写す変換が構成できることを示し、それが与えられた \( P_{x,y} \) と一致することを確認する。
直交性より行列式と固有値を議論でき、作用の様子から回転となることがわかる。
解答例
まずハウスホルダー変換を定義する。単位ベクトル \( x \) に対して
U_{x}=I-2xx^{T}
は実ハウスホルダー行列であり、\( U_{x}^{T}U_{x}=I \) が成り立つので直交行列である。同様に \( w=x+y \) に対し
U_{w}=I-\frac{2}{w^{T}w}ww^{T}
も実ハウスホルダー行列であり直交行列である。したがって積 \( U_{w}U_{x} \) は直交行列である。
定義から計算すると
U_{w}U_{x}= \left(I-\frac{2}{w^{T}w}ww^{T}\right)\left(I-2xx^{T}\right)
となり、これは問題文に与えられた \( P_{x,y} \) に一致する。よって \( P_{x,y} \) は2つの実ハウスホルダー行列の積であり、直交行列である。
直交行列の行列式は \( \pm 1 \) であり、また \( P_{x,y} \) は連続的に恒等行列に変形可能で、かつ \( x=y \) の場合には恒等行列となるので、行列式は連続性より常に \( +1 \) である。したがって \( P_{x,y} \) は正の回転行列である。
次に作用を調べる。まず
U_{x}x=-x,\qquad U_{w}w=-w
が成り立つことから計算すると \( P_{x,y}x=y \) が得られる。同様に計算により
P_{x,y}y=-x+2(x^{T}y)y
が得られる。
また \( z \) が \( x \) および \( y \) に直交するとき、\( w \) にも直交するので \( xx^{T}z=0 \), \( ww^{T}z=0 \) が成り立ち、
P_{x,y}z=z
が従う。したがって \( P_{x,y} \) は \( \operatorname{span}\{x,y\}^{\perp} \) 上で恒等である。
2次元部分空間 \( \operatorname{span}\{x,y\} \) 上では、\( x \) を \( y \) に写す直交変換であり、行列式が \( +1 \) なので正回転となる。
特に \( n=3 \) の場合、\( x\times y \) はこの平面に直交する単位ベクトルであり、上で見たように不変ベクトルとなる。したがって \( x \) を \( y \) に写し \( x\times y \) を保つ正回転は一意である。
最後に固有値を考える。2次元部分空間 \( \operatorname{span}\{x,y\} \) 上での作用は回転角 \( \theta \) をもつ回転であり、そのとき
\cos\theta=x^{T}y
が成り立つ。したがって固有値はこの平面で
x^{T}y\pm i\sqrt{1-(x^{T}y)^{2}}=e^{\pm i\theta}
となり、直交補空間では恒等変換であるから固有値は 1 である。したがって固有値全体は
e^{\pm i\theta},1,\dots,1
となり、すべての主張が示された。
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