[行列解析1.4.P6]正成分固有ベクトルをもつ固有値の性質

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.4.P6

1.4.問題6

次の条件を考える。

\(A \in M_n\) が与えられ、ある固有値 \(\lambda\) に対応する成分全てが正の左固有ベクトルおよび右固有ベクトルを持つとする。

(a) A が \(\lambda\) 以外の固有値に対応して、成分全てが非負の左または右固有ベクトルを持たないことを示せ。

(b) もし \(\lambda\) の幾何重複度が 1 であるならば、その代数重複度も 1 であることを示せ。

ヒント

左固有ベクトルと右固有ベクトルの内積に注目するとよい。

異なる固有値に対応する左固有ベクトルと右固有ベクトルの間には直交性が成り立つ。

すべての成分が正または非負であるという仮定を、この直交性と組み合わせて考察する。

解答例

仮定より、固有値 \( \lambda \) に対応して、成分がすべて正である右固有ベクトル \( x \) と左固有ベクトル \( y \) が存在し、
\( Ax=\lambda x \), \( y^{\ast}A=\lambda y^{\ast} \) が成り立つ。

(a) いま、\( \mu\neq\lambda \) を \( A \) の別の固有値とし、対応する右固有ベクトル \( u \) が成分すべて非負であると仮定する。このとき
\( Au=\mu u \) である。

左固有ベクトルと右固有ベクトルの性質より、

y^{\ast}Au = \mu y^{\ast}u

が成り立つ。一方で \( y^{\ast}A=\lambda y^{\ast} \) であるから、

y^{\ast}Au = \lambda y^{\ast}u

も成り立つ。よって \( (\lambda-\mu)y^{\ast}u=0 \) である。ここで \( \lambda\neq\mu \) であるから、 \( y^{\ast}u=0 \) が従う。

しかし \( y \) は成分がすべて正であり、\( u \) は成分がすべて非負であるため、\( u\neq0 \) ならば内積 \( y^{\ast}u \) は正となる。これは矛盾である。したがって、\( \lambda \) 以外の固有値に対応して、成分すべてが非負の右固有ベクトルは存在しない。同様の議論により、左固有ベクトルについても成り立つ。

(b) 次に、\( \lambda \) の幾何重複度が 1 であると仮定する。もし代数重複度が 2 以上であれば、\( \lambda \) に対応する独立な一般化固有ベクトルが存在する。このとき、\( \lambda \) に対応する左固有ベクトル \( y \) と直交する右固有ベクトルが存在することになる。

しかし、仮定より \( \lambda \) に対応する右固有ベクトルは成分すべて正であり、左固有ベクトルも成分すべて正であるから、その内積は必ず正であり、直交することはない。これは矛盾である。

したがって、\( \lambda \) の代数重複度は 1 でなければならない。

\(A\) の特定の固有値に対応する成分全てが正の左および右固有ベクトルの存在を保証するのに十分な性質については、式 (8.2.2) および (8.4.4) を参照せよ。


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