1.4.12
定理 1.4.12.
\( A \in M_n \)、\( \lambda \in \mathbb{C} \)、およびゼロでないベクトル \( x, y \in \mathbb{C}^n \) を与える。\( \lambda \) が \( A \) の固有値であり、\( Ax = \lambda x \)、\( y^* A = \lambda y^* \) が成り立つと仮定する。
(a) \(\lambda\) の代数的重複度が 1 であるならば、\( y^* x \neq 0 \) である。
(b) \(\lambda\) の幾何的重複度が 1 であるならば、代数的重複度が 1 であることと \( y^* x \neq 0 \) であることは同値である。
証明.
(a)、(b) のいずれの場合も、\(\lambda\) の幾何的重複度は 1 である。先行する補題より、あるゼロでない \(\gamma \in \mathbb{C}\) が存在して、
\operatorname{adj}(\lambda I - A) = \gamma x y^*
が成り立つ。さらに、
p_A(\lambda) = 0, \quad p_A'(\lambda) = \operatorname{tr}(\operatorname{adj}(\lambda I - A)) = \gamma y^* x
が成り立つ((0.8.10.2) を参照)。
(a) では、代数的重複度が 1 であると仮定するので、\( p_A'(\lambda) \neq 0 \) が成り立ち、したがって \( y^* x \neq 0 \) である。
(b) では、\( y^* x \neq 0 \) を仮定するので、\( p_A'(\lambda) \neq 0 \) が成り立ち、したがって代数的重複度は 1 である。
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行列解析の総本山

[行列解析]
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。
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