[行列解析2.6.p38]可逆行列と最小特異値の評価

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.6.P38

2.6.問題38

\(A \in M_n\) が正則で、\(\sigma_n\) が \(A + A^{-*}\) の最小特異値であるとする。\(\sigma_n \ge 2\) を示せ。

また、等号が成立する場合について考察せよ。

ヒント

特異値分解 \(A = U \Sigma V^*\) を用いると、\(A^{-1} = V \Sigma^{-1} U^*\) である。
したがって \(A^{-*} = (A^{-1})^* = U \Sigma^{-1} V^*\) となる。

よって \(A + A^{-*} = U(\Sigma + \Sigma^{-1})V^*\) と書ける。
特異値はユニタリ変換で不変であるから、 \(\Sigma + \Sigma^{-1}\) の対角成分を評価すればよい。

解答例

\(A\) は正則であるから特異値分解 \( A = U \Sigma V^* \) をとると、 \( \Sigma = \mathrm{diag}(\sigma_1,\dots,\sigma_n) \) であり、すべての \(\sigma_i > 0\) である。

このとき \( A^{-1} = V \Sigma^{-1} U^* \) であるから、

A^{-*}
=
(A^{-1})^*
=
U \Sigma^{-1} V^*

となる。 したがって

A + A^{-*}
=
U (\Sigma + \Sigma^{-1}) V^*

である。

ユニタリ行列による左右からの乗法は特異値を変えないので、 \(A + A^{-*}\) の特異値は \(\Sigma + \Sigma^{-1}\) の対角成分 \( \sigma_i + \frac{1}{\sigma_i} \) に一致する。

よって最小特異値は

\min_i \left( \sigma_i + \frac{1}{\sigma_i} \right)

である。

ここで任意の正数 \(x > 0\) に対して相加相乗平均の不等式より

x + \frac{1}{x}
\ge
2

が成り立つ。

したがって \( \sigma_n = \min_i \left( \sigma_i + \frac{1}{\sigma_i} \right) \ge 2 \) である。

等号が成立するのは、 \( \sigma_i + \frac{1}{\sigma_i} = 2 \) となる場合、すなわち \( \sigma_i = 1 \) のときである。

したがって最小特異値が 2 となるのは、 ある特異値が 1 である場合である。 特にすべての特異値が 1 のとき、すなわち \(A\) がユニタリ行列であるときには、 すべての特異値が 2 となる。


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