2.6.P36
2.6.問題36
\(A \in M_n\) がランク r を持ち、正の異なる特異値を \(s_1, \ldots, s_d\)、それぞれの重複度を \(n_1, \ldots, n_d\) とし、特異値分解 \(A = V \Sigma W^*\) を \(V, W \in M_n\) がユニタリ、\(\Sigma = s_1 I_{n_1} \oplus \cdots \oplus s_d I_{n_d} \oplus 0_{n-r}\) とする。
(a) \(A\) が対称であることと、\(V = \bar W (S_1 \oplus \cdots \oplus S_d \oplus \tilde W)\) が成り立つことは同値である理由を説明せよ。
ここで \(\tilde W \in M_{n-r}\) はユニタリ、各 \(S_j \in M_{n_j}\) はユニタリかつ対称である。
(b) \(A\) の特異値が異なる場合(すなわち \(d \ge n-1\))は、\(A\) が対称であることと、\(V = W \bar D\) が成り立つことは同値であり、ここで \(D \in M_n\) は対角ユニタリ行列である理由を説明せよ。
ヒント
特異値分解 \(A = V \Sigma W^*\) において、\(A\) が対称であるとは \(A = A^{\top}\) を意味する。
したがって \( V \Sigma W^* = \overline{W} \Sigma V^{\top} \) が成り立つことになる。
正の特異値ごとに対応する特異空間を考えると、同じ特異値に対応する部分空間上ではユニタリ変換の自由度が残る。
その自由度がブロック \(S_j\) や \(\tilde W\) に対応する。
特異値がすべて異なれば、各特異空間は一次元となるため、自由度は対角ユニタリ行列に限られる。
解答例
(a) 特異値分解 \( A = V \Sigma W^* \) をとる。 \(A\) が対称であることは \( A = A^{\top} \) すなわち
V \Sigma W^*
=
\overline{W} \Sigma V^{\top}
が成り立つことと同値である。
両辺に左から \(V^*\)、右から \(\overline{V}\) を掛けると
\Sigma (W^* \overline{V})
=
(V^* \overline{W}) \Sigma
を得る。 ここで \(U = V^* \overline{W}\) とおくと、
\Sigma U = U^{\top} \Sigma
が成り立つ。
\(\Sigma\) は \( s_1 I_{n_1} \oplus \cdots \oplus s_d I_{n_d} \oplus 0_{n-r} \) であるから、正の特異値に対応する部分では 各ブロックごとに \( s_j U_{jj} = s_j U_{jj}^{\top} \) となり、 \( U_{jj} = U_{jj}^{\top} \) である。
また異なる特異値に対応するブロック間では \( s_i U_{ij} = s_j U_{ij}^{\top} \) となるが、 \(s_i \ne s_j\) より \(U_{ij}=0\) が従う。
したがって \(U\) は \( S_1 \oplus \cdots \oplus S_d \oplus \tilde W \) の形となり、 各 \(S_j\) はユニタリかつ対称である。
ゆえに \( V = \overline{W}(S_1 \oplus \cdots \oplus S_d \oplus \tilde W) \) が成り立つ。 逆にこの形を仮定すれば上の計算を逆に辿ることで \(A = A^{\top}\) が従う。
(b) 特異値がすべて異なる場合、各 \(n_j = 1\) である。 したがって各 \(S_j\) は 1 次元ユニタリ行列、すなわち複素数で絶対値 1 のものとなる。
よって \( S_1 \oplus \cdots \oplus S_d \oplus \tilde W \) は対角ユニタリ行列 \(D\) に一致する。
このとき条件は \( V = \overline{W} D \) すなわち \( V = W \overline{D} \) と同値である。
逆も同様に成り立つので、 特異値が異なる場合には \(A\) が対称であることと \(V = W \overline{D}\) が成り立つことは同値である。
行列解析の総本山
総本山の目次📚

記号の意味🔎




コメント