[行列解析2.5.P74]正規行列Xに対する可換関係の反例

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P74

2.5.問題74

\( A, B, X \in M_n \) とする。

もし \(AX = XB\) であり、かつ \(X\) が正規行列ならば、\(AX^* = X^*B\) が成り立つか? Fuglede–Putnam の定理 (2.5.16) と比較せよ。

ヒント

Fuglede–Putnam の定理では、\(A,B\) が正規であることが本質である。

本問では正規性が \(X\) にしか仮定されていないため、この条件が弱すぎる可能性がある。

具体的な反例を与えて検討する。

解答例

結論として、一般には \(AX=XB\) かつ \(X\) が正規であっても、 \(AX^*=X^*B\) は成り立たない。

実際、次の例を考える。

A=
\begin{pmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{pmatrix},
\quad
B=
\begin{pmatrix}
1 & 0\\
0 & 1
\end{pmatrix},
\quad
X=I

このとき \(X=I\) は正規行列であり、 \(AX=XB=A\) が成り立つ。

一方で \(X^*=I\) であるから \(AX^*=A\) であるが、 \(X^*B=B\) であり、

\(A\neq B\) であるため \(AX^*=X^*B\) は成り立たない。

したがって、仮定 \(AX=XB\) と \(X\) が正規 だけでは \(AX^*=X^*B\) は一般に従わない。

これに対し Fuglede–Putnam の定理では、 \(A\) と \(B\) の双方が正規であることを仮定することで、 \(AX=XB\) と \(A^*X=XB^*\) が同値になる。

すなわち、本問の否定的結論は、 正規性を \(X\) にのみ課した場合には条件が不十分であることを示している。


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