[行列解析2.5.P72]正規行列と実直交相似の具体例

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P72

2.5.問題72

行列

 A_1 = \begin{bmatrix} i & 0 \\ 0 & -i \end{bmatrix}, \quad A_2 = \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{bmatrix} 

を考える。

(a) 各行列が正規行列であり、かつその複素共役と可換であることを示せ。

(b) 各行列の固有値を求めよ。

(c) \(A_1\) が \(A_2\) とユニタリ相似である理由を説明せよ。

(d) \(A_1\) が \(A_2\) と実直交相似ではないことを示せ。

(e) \(A \in M_n\) が正規であり、かつ 定理(2.5.17) の (a) または (b) の条件を満たすとき、\(A\) は零行列と (2.5.17.1) にある4種類のブロックの非零スカラー倍との直和に実直交相似である。

どのブロックやスカラー倍が現れるかを決定するためには、固有値だけでなく \(A\) のさらなる情報が必要である理由を説明せよ。

ヒント

正規行列であることは \(A^*A=AA^*\) により確認でき、
複素共役との可換性は成分ごとの計算で確かめられる。

固有値は特性多項式から求める。

ユニタリ相似と実直交相似の違いは、許される基底変換が複素か実かに依存する点に注意する。

解答例

まず \( A_1=\begin{bmatrix} i&0\\0&-i\end{bmatrix} \), \( A_2=\begin{bmatrix}0&1\\-1&0\end{bmatrix} \) とする。

(a) \(A_1^*=-A_1\)、\(A_2^*=-A_2\) であるから \(A_k^*A_k=A_kA_k^*\) が成り立ち、いずれも正規行列である。
また \( \overline{A_1}=-A_1 \), \( \overline{A_2}=A_2 \) より \( \overline{A_k}A_k=A_k\overline{A_k} \) が直接確認できる。

(b) \(A_1\) の固有値は対角成分から \( \lambda=\pm i \) である。一方 \(A_2\) の特性多項式は \( \lambda^2+1 \) であり、固有値は \( \lambda=\pm i \) である。

(c) 両者は同じ固有値集合を持ち、正規行列であるため、スペクトル定理よりそれぞれユニタリ行列で対角化できる。
従って \(A_1\) と \(A_2\) はユニタリ相似である。

(d) 実直交相似であれば、定理 2.5.17 により \(Q^{\top}AQ\) は実行列ブロックの直和に変換できる必要がある。
しかし \(A_1\) は純虚数固有値のみを持つ複素対角行列であり、実直交相似で \( \begin{bmatrix}0&1\\-1&0\end{bmatrix} \) 型に変換することはできない。
よって \(A_1\) と \(A_2\) は実直交相似ではない。

(e) 一般に \(A\in M_n\) が正規で、かつ \( \overline{A}A=A\overline{A} \) または \( A^{\top}A=AA^{\top} \) を満たすとき、定理 2.5.17 より \(A\) は零ブロックと (2.5.17.1) に挙げられた4種類のブロックの非零スカラー倍との直和に実直交相似である。

ただし、どのブロックやスカラー倍が現れるかは固有値だけでは一意に定まらない。

例えば同じ固有値を持つ場合でも、実直交相似かどうかは行列が持つ実構造や共役との可換性といった追加の情報に依存するためである。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました