2.5.P71
2.5.問題71
行列
\begin{bmatrix} a & b \\ -b & a \end{bmatrix} \in M_2(\mathbb{R}) は実正規行列の議論において重要な役割を果たす。
この行列を (1.3.P20) で扱った実表現 \(R_1(A)\) の特別な場合として、その性質を議論せよ。
ヒント
\( A = A_1 + iA_2 \)、\( B = B_1 + iB_2 \) とする。このとき\(R_1(A)\) は次の式で定義される。
R_1(A)=
\begin{pmatrix}
A_1 & -A_2\\
A_2 & A_1
\end{pmatrix}
複素行列 \( A = A_1 + iA_2 \) を実行列で表す写像 \( R_1 \) は、和・積・逆行列・相似変換を保つことを直接計算で確認するのが基本である。
また、適切な複素行列 \( S, U \) を用いて相似変換を行うことで、\( R_1(A) \) が \( A \) とその複素共役 \( \overline{A} \) の直和と同値な情報を持つことが分かる。
解答例
(a) 加法については成分ごとに計算すれば \( R_1(A+B)=R_1(A)+R_1(B) \) が従う。積についても \( AB=(A_1B_1-A_2B_2)+i(A_1B_2+A_2B_1) \) を用いれば \( R_1(AB)=R_1(A)R_1(B) \) が直接確認できる。さらに \( R_1(I_1)=I_2 \) である。
(b) \( A \) が正則ならば \( AA^{-1}=I_1 \) より \( R_1(A)R_1(A^{-1})=I_2 \) となるため、\( R_1(A) \) も正則で \( R_1(A)^{-1}=R_1(A^{-1}) \) が成り立つ。この逆行列は
R_1(A)^{-1}=
\begin{pmatrix}
X & Y\\
- Y & X
\end{pmatrix}
の形を保ち、同じブロック構造を持つ。
(c) \( S \) が正則であれば \( R_1(SAS^{-1})=R_1(S)R_1(A)R_1(S)^{-1} \) が (a)(b) から直ちに従う。
(d) \( A \) と \( B \) が相似、すなわち \( B=SAS^{-1} \) と書けるとき、(c) より \( R_1(A) \) と \( R_1(B) \) も相似である。
(e) 行列 \( S=\begin{pmatrix} I_1&0\\ iI_1&I_1\end{pmatrix} \), \( U=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} I_1&iI_1\\ iI_1&I_1\end{pmatrix} \) について直接計算すると \( S^{-1}=\overline{S} \), \( U^{-1}=\overline{U}=U^* \) が成り立つ。
S^{-1} R_1(A) S =
\begin{pmatrix}
A & -A_2\\
0 & \overline{A}
\end{pmatrix},
\quad
U^{-1} R_1(A) U =
\begin{pmatrix}
A & 0\\
0 & \overline{A}
\end{pmatrix}
(f) 上式より \( R_1(A) \) は \( A \oplus \overline{A} \) と相似である。
(g) したがって \( R_1(A) \) の固有値は \( A \) と \( \overline{A} \) の固有値を合わせたものであり、 \( \lambda_1,\overline{\lambda_1}\) となる。
(h) 行列式と階数については直和の性質から \( \det R_1(A)=|\det A|^2\ge0 \), \( \mathrm{rank}\,R_1(A)=2\,\mathrm{rank}\,A \) が従う。
(i) 特に \( R_1(A) \) が正則ならば \( \det R_1(A)\neq0 \) であり、 \( \det A\neq0 \) すなわち \( A \) も正則である。
(j) \( iI_1 \) と \( -iI_1 \) は固有値が異なるため相似でないが、 \( R_1(iI_1) \) と \( R_1(-iI_1) \) は同じ固有値を持つため相似である。 よって (d) の逆は一般に成り立たない。
(k) 特性多項式についても直和より \( p_{R_1(A)}(t)=p_A(t)p_{\overline{A}}(t) \) が成り立つ。
(l) 成分計算から \( R_1(A^*)=R_1(A)^T \) が分かる。したがって \( A \) がエルミートであることと \( R_1(A) \) が実対称であることは同値であり、 同様にユニタリと実直交も同値である。
(m) \( A \) が正規、すなわち \( AA^*=A^*A \) であることは、 \( R_1(A) \) が \( R_1(A)^T \) と可換であることと同値である。
(n) \( M_{2n}(\mathbb{R}) \) において、\( R_1(A) \) のブロック構造を持つ行列を複素型行列(matrix of complex type)という。
\( M_2(\mathbb{R}) \) において
S_2=
\begin{pmatrix}
0_1 & I_1\\
- I_1 & 0_1
\end{pmatrix}
とおくと、\( R_1(A) \) 型の行列はちょうど \( S_2A=AS_2 \) を満たす行列である。
この関係式から、 複素型行列の逆行列も積も再び複素型行列になることが分かる。
行列解析の総本山
総本山の目次📚

記号の意味🔎




コメント