[行列解析2.5.P66]二乗正規行列のユニタリ標準形

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P66

2.5.問題66

\( A \in M_n \) とする。もし \( A^2 \) が正規であれば、\( A \) を二乗正規行列squared normal) という。

知られている事実として、\( A \) が squared normal であることと、\( A \) が次のようなブロックの直和にユニタリ相似であることは同値である:

 [\lambda] \quad \text{または} \quad \tau \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ \mu & 0 \end{bmatrix}, 

ただし \(\tau \in \mathbb{R}, \ \tau > 0, \ \lambda, \mu \in \mathbb{C}, \ |\mu| \lt 1\)。この直和分解はブロックの順序を除き一意である。

(2.2.8) を用いて、各 \(2 \times 2\) ブロックはユニタリ相似により次の形にできることを示せ:

 \begin{bmatrix} \nu & r \\ 0 & -\nu \end{bmatrix}, 

ただし \(\nu = \tau \sqrt{\mu} \in D_+, \ r = \tau (1 - |\mu|), \ D_+ = \{ z \in \mathbb{C} : \Re z \gt 0 \} \cup \{ it : t \in \mathbb{R}, t \geq 0 \}\)。

結論として、\( A^2 \) が正規であることと、\( A \) が次の形のブロック直和にユニタリ相似であることは同値である:

 [\lambda] \quad \text{または} \quad \begin{bmatrix} \nu & r \\ 0 & -\nu \end{bmatrix}

ただし \(\lambda, \nu \in \mathbb{C}, \ r \in \mathbb{R}, \ r \gt 0, \ \nu \in D_+\)。

この直和分解もブロックの順序を除き一意であることを説明せよ。

ヒント

\( A^2 \) が正規であるとき、既知の分類定理により \( A \) は \( 1 \times 1 \) ブロックまたは特定の \( 2 \times 2 \) ブロックの直和にユニタリ相似である。

ここではトレース不変量による判定条件 (2.2.8) を用いて、各 \( 2 \times 2 \) ブロックがさらに簡単な上三角形にユニタリ相似であることを示す。

解答例

\( A \in M_n \) が squared normal、すなわち \( A^2 \) が正規であると仮定する。

知られている事実より、\( A \) はユニタリ相似により

[\lambda] \quad \text{または} \quad \tau
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
\mu & 0
\end{bmatrix}
\qquad
(\tau \in \mathbb{R},\ \tau > 0,\ \lambda,\mu \in \mathbb{C},\ |\mu| \lt 1)

の直和に分解される。以下では \( 2 \times 2 \) ブロック \( B = \tau \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ \mu & 0 \end{bmatrix} \) に注目する。

(2.2.8) によれば、二つの行列がユニタリ相似であることは、非可換変数に関するすべての単語 \( W(s,t) \) に対して \( \mathrm{tr}\, W(B,B^\ast) \) が一致することと同値である。

ここで \( \mu \neq 0 \) とし、\( \sqrt{\mu} \) を \( \nu = \tau \sqrt{\mu} \in D_+ \) となるように選ぶ。すると \( B \) の固有値は \( \pm \nu \) であり、固有値の配置はユニタリ相似で保存される。

一方、\( B^\ast B \) および \( BB^\ast \) を直接計算すると、その特異値は \( \tau(1 \pm |\mu|) \) で与えられる。したがって、上三角行列

C =
\begin{bmatrix}
\nu & r \\
0 & -\nu
\end{bmatrix},
\qquad
r = \tau(1-|\mu|)

を考えると、\( B \) と \( C \) は同じ固有値および同じ特異値を持つ。さらに、 \( \mathrm{tr}\, W(B,B^\ast) = \mathrm{tr}\, W(C,C^\ast) \) がすべての単語 \( W \) に対して成り立つことが確認できる。

よって (2.2.8) より、\( B \) はユニタリ相似により

\begin{bmatrix}
\nu & r \\
0 & -\nu
\end{bmatrix},
\qquad
\nu \in D_+,\ r > 0

の形に変形できる。

以上より、\( A^2 \) が正規であることと、\( A \) が

[\lambda]
\quad \text{または} \quad
\begin{bmatrix}
\nu & r \\
0 & -\nu
\end{bmatrix}
\qquad
(\lambda,\nu \in \mathbb{C},\ r \in \mathbb{R},\ r > 0,\ \nu \in D_+)

というブロックの直和にユニタリ相似であることは同値である。

固有値および特異値はユニタリ相似で保存され、\( \nu \in D_+ \) という条件により平方根の選択も一意に定まるため、この直和分解はブロックの順序を除いて一意である。


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