[行列解析2.5.P58]正規行列における積消滅条件の同値性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P58

2.5.問題58

\( A \in M_n \) が正規行列であるとする。

このとき \( A\overline{A} = 0 \) が成り立つことと、\( AA^{\top} = A^{\top}A = 0 \) が成り立つことは同値である。

(a) 定理(2.5.17) を用いてこれを示せ。

定理 2.5.17. \(A \in M_n\) が正規行列(normal)とする。

このとき次の3条件は同値である。

(a) \(\overline{A}\,A = A\,\overline{A}\)。

(b) \(A^{\top}A = AA^{\top}\)。

(c) 実直交行列 \(Q\) が存在して、\(Q^{\top}AQ\) は有限個のブロックの直和(順序は任意)に相当し、各ブロックは「零ブロック」または、次のいずれかの非零スカラー倍である:

 \begin{bmatrix}1\end{bmatrix},\quad \begin{bmatrix}0 & 1\\ -1 & 0\end{bmatrix},\quad \begin{bmatrix}a & b\\ -b & a\end{bmatrix},\quad \begin{bmatrix}1 & i\\ -i & 1\end{bmatrix},\qquad a,b\in\mathbb{C} 

ここで、\(\begin{bmatrix}a & b\\ -b & a\end{bmatrix}\) に対しては \(a\neq 0\neq b\) かつ \(a^{2}+b^{2}=1\) を満たす。

逆に、\(A\) が (2.5.17.1) 形のブロックの複素スカラー倍の直和に実直交的に相似であるならば、\(A\) は正規行列であり、\(\overline{A}\,A = A\,\overline{A}\) が成り立つ。

(b) 次の別証の詳細を与えよ(0.2.5.1):

\begin{aligned}
A \overline{A} = 0 
&\Rightarrow \ 0 = A^* A \overline{A} = A A^* \overline{A} \\
&\Rightarrow \ \overline{A}A^{\top} A = 0 \\
&\Rightarrow (A^{\top} A)^*(A^{\top}  A) = 0 \\
&\Rightarrow A^{\top} A = 0 
\end{aligned}

ヒント

正規行列に対しては、実直交相似による標準形が利用できる。

また、随伴や転置との関係を用いることで、行列積が零となる条件を別の形に書き換えることができる。

解答例

(a) \( A \) を正規行列とする。

定理 (2.5.17) より、ある実直交行列 \( Q \) が存在して、\( Q^{\top} A Q \) は零ブロックおよび定理に挙げられた有限個の基本ブロックの直和に分解できる。

したがって、\( A\overline{A} = 0 \) および \( AA^{\top} = A^{\top}A = 0 \) の成立は、各ブロックごとに検証すれば十分である。

零ブロックについては明らかに両条件は成り立つ。
一方、非零ブロックについては、直接計算により \( B\overline{B} \neq 0 \) かつ \( BB^{\top} \neq 0 \) が成り立つことが確認できる。

よって、直和全体として \( A\overline{A} = 0 \) が成り立つのは、全てのブロックが零ブロックである場合に限られ、そのとき同時に \( AA^{\top} = A^{\top}A = 0 \) も成り立つ。
逆も同様であり、両条件は同値である。

(b) 別証を与える。

まず \( A\overline{A} = 0 \) と仮定する。正規性より \( A^*A = AA^* \) が成り立つので、

\begin{aligned}
0 & = A \overline{A} \\
A^* 0 & = (A^* A )\overline{A}\\
0 &= (A A^* )\overline{A} 
\end{aligned}

を得る。したがって

\begin{aligned}
A A^*\overline{A} &=0 \\
\overline{A A^{\ast}} A &=0 \\
\overline{A }A^{\top} A &= 0
\end{aligned}

を得る。これは

\begin{aligned}
\overline{A }(A^{\top} A) &= 0 \\
A^{\ast}\overline{A }(A^{\top} A) &= 0 \\
(A^{\top} A)^* (A^{\top} A) &= 0
\end{aligned}

と書き換えられる。
行列 \( (A^{\top} A)^*(A^{\top} A) \) は半正定値であるから、これが零であるためには \( A^{\top} A = 0 \) でなければならない。

逆に \( A^{\top} A = 0 \) から出発して同様の計算を逆にたどれば \( A\overline{A} = 0 \) が従う。

以上より、両条件は同値である。


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