[行列解析2.5.P54]正規行列の零空間と値域の基本性質

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P54

2.5.問題54

\( A, B \in M_n \) が正規行列であるとする。

このとき次を示せ:

(a) \( A \) の零空間は \( A \) の値域と直交する。

(b) \( A \) の値域と \( A^* \) の値域は一致する。

(c) \( A \) の零空間が \( B \) の零空間に含まれることと、\( A \) の値域が \( B \) の値域を含むことは同値である。

ヒント

正規行列では \( A^*A = AA^* \) が成り立つ。

この性質から、零空間と値域の直交関係や、\( A \) と \( A^* \) の構造的な対称性が導かれる。

(c) では直交補空間の関係 \( \mathcal{R}(A)^\perp = \mathcal{N}(A^*) \) を用いる。

解答例

(a) 任意に \( x \in \mathcal{N}(A) \)、\( y \in \mathcal{R}(A) \) をとる。

するとある \( z \) が存在して \( y = Az \) と書ける。

このとき \( \langle x, y \rangle = \langle x, Az \rangle = \langle A^*x, z \rangle \) である。

\( A \) は正規行列なので \( \mathcal{N}(A) = \mathcal{N}(A^*) \) が成り立ち、\( A^*x = 0 \) となる。

したがって \( \langle x, y \rangle = 0 \) であり、\( \mathcal{N}(A) \) は \( \mathcal{R}(A) \) と直交する。

(b) 一般に \( \mathcal{R}(A)^\perp = \mathcal{N}(A^*) \)、\( \mathcal{R}(A^*)^\perp = \mathcal{N}(A) \) が成り立つ。

(a) より \( \mathcal{N}(A) = \mathcal{N}(A^*) \) であるから、 \( \mathcal{R}(A)^\perp = \mathcal{R}(A^*)^\perp \) となる。

有限次元空間では直交補が等しければ元の部分空間も等しいので、 \( \mathcal{R}(A) = \mathcal{R}(A^*) \) が従う。

(c) \( \mathcal{N}(A) \subseteq \mathcal{N}(B) \) と仮定する。

このとき直交補をとると \( \mathcal{N}(B)^\perp \subseteq \mathcal{N}(A)^\perp \) が成り立つ。

正規性より \( \mathcal{N}(A)^\perp = \mathcal{R}(A), \ \mathcal{N}(B)^\perp = \mathcal{R}(B) \) であるから、 \( \mathcal{R}(B) \subseteq \mathcal{R}(A) \) すなわち \( \mathcal{R}(A) \supseteq \mathcal{R}(B) \) を得る。

逆に \( \mathcal{R}(A) \supseteq \mathcal{R}(B) \) と仮定すると、同様に直交補をとることで \( \mathcal{N}(A) \subseteq \mathcal{N}(B) \) が従う。

したがって両条件は同値である。


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