[行列解析2.5.P42]正規性欠陥と積行列の正規性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P42

2.5.問題42

\( A, B \in M_n \) とし、\(\lambda_1, \ldots, \lambda_n\) を \( A \) の固有値とする。

次で定義される量

 \delta(A) = \mathrm{tr}(A^*A) - \sum_{i=1}^n |\lambda_i|^2 

を \( A \) の正規性からの欠陥(defect)と呼ぶ。

Schurの不等式(2.3.2a)
\begin{align}\sum_{i=1}^{n} |\lambda_i|^2 
&= \sum_{i,j=1}^{n} |a_{ij}|^2 - \sum_{i \lt j} |t_{ij}|^2 \notag \\
&\leq \sum_{i,j=1}^{n} |a_{ij}|^2 \notag  \\
&= \mathrm{tr}(A A^*) \notag 
\end{align}
(2.5.3)(c)
 \sum_{i,j=1}^{n} |a_{ij}|^2 = \sum_{i=1}^{n} |\lambda_i|^2 

Schurの不等式 (2.3.2a) により \(\delta(A) \geq 0\) が成り立ち、また (2.5.3)(c) により \( A \) が正規であることと \(\delta(A) = 0\) が同値である。

(a) \( A, B, AB \) が正規ならば、 \(\mathrm{tr}((AB)^*(AB)) = \mathrm{tr}((BA)^*(BA))\) が成り立ち、このことから \( BA \) も正規であることを説明せよ。

(b) \( A \) が正規であり、\( A \) と \( B \) が同じ特性多項式を持ち、さらに \(\mathrm{tr}(A^*A) = \mathrm{tr}(B^*B)\) であると仮定する。

B が正規であり、A とユニタリ相似であることを示せ。(2.5.P15) と比較せよ。

ヒント

正規性欠陥 \( \delta(A) \) は \( \mathrm{tr}(A^*A) \) と固有値の大きさの二乗和との差で定義される。Schur分解を用いると、正規性は上三角成分の消失と対応する。

積行列については、跡の巡回性 \( \mathrm{tr}(XY)=\mathrm{tr}(YX) \) を用いるのが基本である。

解答例

(a) \( A, B, AB \) が正規であると仮定する。

まず \( (AB)^*(AB)=B^*A^*AB \), \( (BA)^*(BA)=A^*B^*BA \) である。

トレースの巡回性より \( \mathrm{tr}(B^*A^*AB)=\mathrm{tr}(A^*ABB^*) \), さらに \( AB \) が正規であるから \( AB(AB)^*=(AB)^*(AB) \) が成り立ち、同様に整理すると \( \mathrm{tr}((AB)^*(AB))=\mathrm{tr}((BA)^*(BA)) \) を得る。

このとき \( AB \) と \( BA \) は同じ固有値を重複度込みで共有するので、 \( \sum_{i=1}^n |\lambda_i(AB)|^2 = \sum_{i=1}^n |\lambda_i(BA)|^2 \) が成り立つ。

したがって \( \delta(AB)=\mathrm{tr}((AB)^*(AB))-\sum |\lambda_i(AB)|^2 \) と \( \delta(BA)=\mathrm{tr}((BA)^*(BA))-\sum |\lambda_i(BA)|^2 \) は等しい。

仮定より \( AB \) は正規なので \( \delta(AB)=0 \) であり、よって \( \delta(BA)=0 \) となる。従って \( BA \) も正規である。

(b) \( A \) が正規であり、かつ \( A \) と \( B \) が同じ特性多項式をもつと仮定する。

このとき \( A \) と \( B \) は固有値を重複度込みで共有する。

したがって \( \sum_{i=1}^n |\lambda_i(A)|^2 = \sum_{i=1}^n |\lambda_i(B)|^2 \) が成り立つ。

\(A\) は正規なので \(\delta(A)=0 \) すなわち\(\mathrm{tr}(A^*A)=\sum_{i=1}^n |\lambda_i(A)|^2 \)が成り立つ。

一方、(A) と (B) は同じ特性多項式をもつため
\( \sum_{i=1}^n |\lambda_i(B)|^2 =\sum_{i=1}^n |\lambda_i(A)|^2 \)である。

さらに仮定より\( \mathrm{tr}(B^*B)=\mathrm{tr}(A^*A) \)であるから \( \mathrm{tr}(B^*B)=\sum_{i=1}^n |\lambda_i(B)|^2 \)が従う。

よって \( \delta(B)=0 \)となり、定義より \(B\) も正規行列である。

正規行列はユニタリ相似により対角化できるので、

\( A = U \mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) U^* \)
\( B = V \mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) V^* \)
となるユニタリ行列 \(U, V\) が存在する(固有値は重複度込みで一致しているため、同じ対角行列を選べる)。

上式より \( B = (VU^*) A (VU^*)^* \)が成り立つ。

ここで \( VU^* \) はユニタリ行列であるから,\( B \) は \(A\) とユニタリ相似である


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