[行列解析2.5.P37]正規行列のブロック分解と主小行列の性質

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P37

2.5.問題37

\(n \geq 2\) とし、

 A = \begin{bmatrix} a & x^{*} \\ y & B \end{bmatrix} \in M_{n}, 

ただし \(B \in M_{n-1}, x, y \in \mathbb{C}^{n-1}\) であり、\(A\) は正規とする。

(a)  \(\|x\|^{2} = \|y\|^{2}\) かつ \(xx^{*} - yy^{*} = BB^{*} - B^{*}B\) であることを示せ。

(b)  任意の正方複素行列 \(F\) に対して \(\mathrm{rank}(FF^{*} - F^{*}F) \neq 1\) である理由を説明せよ。

(c) 次の2つの排他的可能性がある理由を説明せよ: (i) 主小行列 \(B\) が正規であるか、(ii) \(\mathrm{rank}(BB^{*} - B^{*}B) = 2\)。

(d) \(B\) が正規であることと、ある実数 \(\theta\) が存在して \(x = e^{i\theta}y\) であることは同値であることを説明せよ。

(e) 次の例を考察せよ:

 B = \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{bmatrix}, \quad x = \begin{bmatrix} -\sqrt{2} \\ 1 \end{bmatrix}, \quad y = \begin{bmatrix} 1 \\ -\sqrt{2} \end{bmatrix}, \quad a = 1 - \sqrt{2}. 

ヒント

行列 \(A\) が正規であるとは \(AA^{*} = A^{*}A\) が成り立つことである。

ブロック行列として積を計算し,各ブロックを比較することで条件が導かれる。(b) では反自己随伴行列 \(FF^{*}-F^{*}F\) の階数に注目する。(c)〜(d) は (a)(b) の結果を組み合わせて考える。

解答例

(a)

AA^{*}
=
\begin{bmatrix}
|a|^{2} + x^{*}x & a y^{*} + x^{*}B^{*} \\
\overline{a}y + Bx & yy^{*} + BB^{*}
\end{bmatrix}
\\
\quad \\
A^{*}A
=
\begin{bmatrix}
|a|^{2} + y^{*}y & \overline{a}x^{*} + y^{*}B \\
ax + B^{*}y & xx^{*} + B^{*}B
\end{bmatrix}.

正規性 \(AA^{*}=A^{*}A\) より左上成分から \(x^{*}x = y^{*}y\)、すなわち \( \|x\|^{2} = \|y\|^{2} \) が従う。右下ブロックを比較すると \(yy^{*}+BB^{*}=xx^{*}+B^{*}B\) であり、整理して \(xx^{*}-yy^{*}=BB^{*}-B^{*}B\) を得る。

(b)

行列 \(FF^{*}-F^{*}F\) は反自己随伴であり、そのトレースは \(0\) である。階数が 1 であると仮定すると,固有値は 0 以外に 1 個しか持たないが,反自己随伴行列の非零固有値は共役対で現れるため矛盾する。したがって \( \mathrm{rank}(FF^{*}-F^{*}F)\neq 1 \) である。

(c)

(a) より \(xx^{*}-yy^{*}=BB^{*}-B^{*}B\) である。右辺が零なら \(B\) は正規である。一方,零でない場合,(b) により階数は 1 になれないため,最小でも 2 である。よって (i) \(B\) が正規,または (ii) \( \mathrm{rank}(BB^{*}-B^{*}B)=2 \) のいずれかしか起こらない。

(d)

\(B\) が正規であれば \(BB^{*}-B^{*}B=0\) であり,(a) より \(xx^{*}=yy^{*}\) が成り立つ。このとき (2.5.P35) の結果から,ある実数 \(\theta\) が存在して \(x=e^{i\theta}y\) となる。逆に \(x=e^{\theta}y\) なら \(xx^{*}=yy^{*}\) であり,(a) より \(BB^{*}=B^{*}B\) が従い,\(B\) は正規である。

(e)

与えられた \(B,x,y,a\) について直接計算すると \( \|x\|^{2}=\|y\|^{2} \) かつ \(xx^{*}-yy^{*}=BB^{*}-B^{*}B\) が成り立ち,対応する行列 \(A\) は正規である。一方で \(B\) は正規でなく,この場合は (c) の (ii) が実現している具体例である。


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