2.5.P28
2.5.問題28
エルミート行列 \(A, B \in M_{n}\) が与えられ、\(AB\) が正規であると仮定する。
(a) なぜ \(BA\) も正規なのかを説明せよ。
(b) \(A\) が \(B^{2}\) と可換し、\(B\) が \(A^{2}\) と可換することを示せ。
(c) 多項式 \(p(t)\) が存在して \(A = p(A^{2})\) または \(B = p(B^{2})\) が成り立つなら、\(A\) と \(B\) は可換し、さらに \(AB\) は実際にはエルミートであることを示せ。
(d) (c) の条件が、非零固有値 \(\lambda\) に対して \(-\lambda\) が固有値ではないという性質を \(A\) または \(B\) が満たすとき成立する理由を説明せよ。
たとえば、\(A\) または \(B\) がすべての固有値を非負に持つ場合、この条件は満たされる。(d) 次の例を考察せよ。
A = \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{bmatrix}, \quad B = \begin{bmatrix} 0 & i \\ -i & 0 \end{bmatrix}. ヒント
エルミート行列では \(A^{*}=A\) が成り立つ。積 \(AB\) が正規であるとは \(AB(AB)^{*}=(AB)^{*}AB\) が成り立つことを意味する。これを随伴の性質と組み合わせて計算し、可換性や多項式表現との関係を調べる。
解答例
(a) \(A,B\) はエルミートなので \(A^{*}=A\), \(B^{*}=B\) である。仮定より \(AB\) は正規であるから、
AB(AB)^{*}=(AB)^{*}AB
が成り立つ。ここで \((AB)^{*}=BA\) であるから、
ABBA=BAAB
を得る。両辺の左右を入れ替えると \(BA(BA)^{*}=(BA)^{*}BA\) が従い、よって \(BA\) も正規である。
(b) 上で得た等式 \(ABBA=BAAB\) を整理すると、
A B^{2} A = B A^{2} B
となる。左から \(A\)、右から \(A\) をまとめて考えることで \(A\) は \(B^{2}\) と可換し、同様に \(B\) は \(A^{2}\) と可換することが分かる。
(c) ある多項式 \(p(t)\) が存在して \(A=p(A^{2})\) が成り立つと仮定する。(b) より \(B\) は \(A^{2}\) と可換するので、任意の多項式について \(B\) は \(p(A^{2})\) とも可換する。したがって \(AB=BA\) である。両者が可換でかつエルミートであるから、
(AB)^{*}=B^{*}A^{*}=BA=AB
となり、\(AB\) はエルミートである。\(B=p(B^{2})\) の場合も同様である。
(d) \(A\) の非零固有値 \(\lambda\) に対して \(-\lambda\) が固有値でないと仮定する。このときスペクトル分解により、\(A\) はその固有値の平方だけで一意的に定まり、ある多項式 \(p(t)\) が存在して \(A=p(A^{2})\) と表せる。同様の議論が \(B\) に対しても成り立つ。したがって (c) の条件が満たされる。例えば \(A\) または \(B\) の固有値がすべて非負であれば、この条件は自動的に成立する。
最後に例として
A=\begin{bmatrix}0&1\\1&0\end{bmatrix},\quad
B=\begin{bmatrix}0&i\\-i&0\end{bmatrix}
を考えると、両者はエルミートであり \(AB\) は正規であるが、固有値条件を満たさないため一般には可換しないことが分かる。
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