[行列解析2.5.P26]正規行列と随伴行列の多項式表示

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P26

2.5.問題26

\(A \in M_{n}\) が与えられたとする。

(a) ある多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*} = p(A)\) ならば、\(A\) は正規であることを示せ。

(b) \(A\) が正規なら、次数が最大で \(n-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*} = p(A)\) となることを示せ。

(c) \(A\) が実行列かつ正規なら、実係数で次数が最大 \(n-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{\top} = p(A)\) となることを示せ。

(d) \(A\) が正規なら、実係数で次数が最大 \(2n-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*} = p(A)\) となることを示せ。

(e) \(A \in M_{n}, B \in M_{m}\) がともに正規なら、次数が最大 \(n+m-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*} = p(A)\)、かつ \(B^{*} = p(B)\) となることを示せ。

(f) \(A \in M_{n}, B \in M_{m}\) がともに正規なら、実係数で次数が最大 \(2n+2m-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*} = p(A)\)、かつ \(B^{*} = p(B)\) となることを示せ。

(g) (e) と (2.4.4.0) を用いて、Fuglede–Putnam の定理 (2.5.16) を証明せよ。

(2.4.4.0)

\( A \in M_n, B \in M_m, X \in M_{n,m} \) とする。もし \( AX - XB = 0 \) ならば、任意の多項式 \( g(t) \) に対して \( g(A)X - Xg(B) = 0 \) が成り立つ。

定理 2.5.16(Fuglede–Putnam)

\( A \in M_n \)、\( B \in M_m \) が正規行列であり、\( X \in M_{n,m} \) とする。
このとき、

AX = XB \quad \Leftrightarrow \quad A^*X = XB^*

(h) (f) を用いて (2.5.P25) の主張を証明せよ。

(2.5.P25)

\( A \in M_n, B \in M_m, X \in M_{n,m} \) とする。もし \( AX - XB = 0 \) ならば、任意の多項式 \( g(t) \) に対して \( g(A)X - Xg(B) = 0 \) が成り立つ。

AX = X \overline{B} \iff A^{*}X = X B^{\top}

ヒント

正規行列はユニタリ対角化できることを用いる。

固有値上で成り立つ関係を多項式補間により行列全体へ拡張する。

実係数の場合は複素共役対を同時に補間することが重要である。

Fuglede–Putnam の定理は、同一多項式で \(A^{*}\) と \(B^{*}\) を表せることと、多項式の可換性を用いて示す。

解答例

(a) ある多項式 \(p(t)\) が存在して \(A^{*}=p(A)\) とする。
このとき \( AA^{*}=Ap(A)=p(A)A=A^{*}A \) が成り立つので、\(A\) は正規である。

(b) \(A\) が正規であるとする。
スペクトル定理より、あるユニタリ行列 \(U\) と対角行列 \( \Lambda=\mathrm{diag}(\lambda_1,\dots,\lambda_n) \) が存在して \( A=U\Lambda U^{*} \) と書ける。
このとき \( A^{*}=U\overline{\Lambda}U^{*} \) である。各 \( \lambda_j \) に対して \( \overline{\lambda_j} \) を与える多項式をラグランジュ補間により構成できるので、次数が最大 \(n-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \( \overline{\Lambda}=p(\Lambda) \) となる。したがって \( A^{*}=p(A) \) である。

(c) \(A\) が実行列かつ正規であるとする。
このとき \( A^{*}=A^{\top} \) であり、固有値は実数または複素共役対で現れる。
(b) の構成において、共役対を同時に補間することで、実係数かつ次数最大 \(n-1\) の多項式 \(p(t)\) を選べる。
よって \( A^{\top}=p(A) \) が成り立つ。

(d) \(A\) が正規であるとする。
固有値集合を \( \{\lambda_1,\dots,\lambda_n\} \) とすると、対応する共役集合 \( \{\overline{\lambda_1},\dots,\overline{\lambda_n}\} \) 上で \( p(\lambda_j)=\overline{\lambda_j} \) を満たす実係数多項式を補間で構成できる。
条件点は高々 \(2n\) 個であるから、次数最大 \(2n-1\) の実係数多項式 \(p(t)\) が存在し、 \( A^{*}=p(A) \) が成り立つ。

(e) \(A\in M_n, B\in M_m\) がともに正規であるとする。
(b) より、それぞれの固有値全体に対して \( \lambda\mapsto\overline{\lambda} \) を与える多項式を同時補間できる。
条件点は高々 \(n+m\) 個であるから、次数最大 \(n+m-1\) の多項式 \(p(t)\) が存在して \( A^{*}=p(A),\quad B^{*}=p(B) \) が成り立つ。

(f) (d) と同様に、実係数で同時補間を行うと、条件点は高々 \(2n+2m\) 個となる。
よって次数最大 \(2n+2m-1\) の実係数多項式 \(p(t)\) が存在して \( A^{*}=p(A),\quad B^{*}=p(B) \) が成り立つ。

(g) \(AX=XB\) とする。(e) より \(A^{*}=p(A), B^{*}=p(B)\) を満たす多項式 \(p(t)\) が存在する。
(2.4.4.0) より \( p(A)X=Xp(B) \) が成り立つので、 \( A^{*}X=XB^{*} \) を得る。
逆向きも同様であり、Fuglede–Putnam の定理が従う。

(h) (f) により、実係数多項式 \(p(t)\) で \( A^{*}=p(A),\ B^{*}=p(B) \) と書ける。
(2.5.P25) の仮定 \(AX=XB\) と (2.4.4.0) を用いると \( A^{*}X=p(A)X=Xp(B)=XB^{*} \) が従う。
これにより \( AX=XB \iff A^{*}X=XB^{\top} \) および \( AX=X\overline{B} \iff A^{*}X=XB^{\top} \) が示される。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました