2.4.P5
2.4.問題5
次の行列を考える。
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\
0 & 0
\end{pmatrix}
なぜ任意に対角化不可能な行列が、ある対角化可能な行列に任意に近い位置に存在しうるのか説明せよ。
さらに、(2.4.P1) を用いて、もし対象行列が異なる固有値を持つならば、そうならないことを説明せよ。
ヒント
対角化不可能な行列(ジョルダン細胞を含む行列など)の成分をわずかに変化させることで、固有値を相異なるものにできる。
相異なる \( n \) 個の固有値を持つ行列は常に対角化可能であるという性質を利用する。
一方で、最初から相異なる固有値を持つ行列の集合は、行列の空間において開集合をなすため、十分小さな摂動を加えても相異なる固有値を持つ(=対角化可能な)性質が維持される。
解答例
与えられた行列 \( A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \) は固有値 \( 0 \)(重解)を持ち、対角化不可能である。しかし、微小な数 \( \epsilon > 0 \) を用いて、次のような行列 \( A_{\epsilon} \) を考える。
A_{\epsilon} = \begin{pmatrix} \epsilon & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}この行列 \( A_{\epsilon} \) の固有値は \( \epsilon \) と \( 0 \) であり、\( \epsilon \neq 0 \) ならば固有値は相異なる。
\( n \) 次正方行列が \( n \) 個の相異なる固有値を持つとき、その行列は常に対角化可能である。\( \epsilon \) を限りなく \( 0 \) に近づけることで、元の行列 \( A \) に任意に近い対角化可能な行列 \( A_{\epsilon} \) を作ることができる。
これは一般の対角化不可能な行列についても、ジョルダン標準形の対角成分をわずかにずらすことで同様の議論が可能である。
一方で、もし対象とする行列がすでに相異なる固有値を持つならば、状況は異なる。行列 \( A \) が相異なる \( n \) 個の固有値を持つための必要十分条件は、固有多項式の判別式 \( D(A) \) が \( 0 \) でないことである。
判別式は行列の成分に関する連続関数(多項式)であるため、\( D(A) \neq 0 \) であれば、行列の成分を十分に小さく変化させても \( D(A_{\epsilon}) \neq 0 \) が維持される。
したがって、ある \( \delta > 0 \) が存在し、\( \|A - B\| < \delta \) を満たすすべての行列 \( B \) もまた相異なる固有値を持つ。
このことは、相異なる固有値を持つ(=対角化可能な)行列の集合が、行列全体の空間において開集合であることを意味する。
ゆえに、対角化可能な行列が「対角化不可能な行列のすぐそば」に常に存在しうるのに対し、相異なる固有値を持つ行列の「すぐそば」には対角化不可能な行列は存在し得ない。
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