[行列解析2.4.p2]上三角行列の階数と固有値に基づく階数の下界

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.4.P2

2.4.問題2

なぜ上三角行列の階数(rank)は、その非零の主対角成分の数以上であるか説明せよ。

行列 \( A = [a_{ij}] \in \mathbb{M}_n \) がちょうど \( k \geq 1 \) 個の非零固有値 \(\lambda_1, \ldots, \lambda_k\) を持つとする。\( A = U T U^* \) と書け、ここで \( U \) はユニタリ行列、\( T = [t_{ij}] \) は上三角行列である。以下を示せ。

階数 \( \mathrm{rank}\, A \geq k \) であり、\( A \) が対角化可能なとき等号成立。

不等式

\left| \prod_{i=1}^k \lambda_i \right|^2 \leq k \sum_{i=1}^k |\lambda_i|^2 = k \sum_{i=1}^n |t_{ii}|^2 \\
\leq k \sum_{i,j=1}^n |t_{ij}|^2 = k \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2

このことから

\mathrm{rank}\, A \geq \frac{|\mathrm{tr}\, A|^2}{\mathrm{tr}\, A^* A}

が成り立ち、等号成立は \( T = a I_k \oplus 0_{n-k} \)

(ただし \( a \in \mathbb{C}, a \neq 0 \))のときに限る。

ヒント

上三角行列の階数は、線形独立な行または列の最大数で決まる。

主対角成分が非零であれば、それらの行は階段行列のピボット(主成分)に対応するため、階数は非零対角成分の数以上となる。

また、行列の固有値の和(トレース)と、行列の全成分の平方和(フロベニウスノルム)の関係にコーシー・シュワルツの不等式を適用することで、階数に関する下界を導出できる。

ユニタリ変換において、トレースやフロベニウスノルムが不変である性質が証明の鍵となる。

解答例

まず、上三角行列 \( T = [t_{ij}] \) において、主対角成分 \( t_{ii} \) が非零である位置を \( i_1, i_2, \ldots, i_m \) とする。これらに対応する行ベクトルは、後続の成分が \( 0 \) であるため、互いに線形独立である。したがって、\( \mathrm{rank}\, T \geq (非零の主対角成分の数) \) が成り立つ。

シューア分解により、任意の行列 \( A \) はユニタリ行列 \( U \) を用いて \( A = U T U^* \) と上三角化できる。このとき \( A \) と \( T \) の固有値は一致し、\( T \) の主対角成分は \( A \) の固有値 \( \lambda_1, \ldots, \lambda_n \) となる。\( A \) がちょうど \( k \) 個の非零固有値を持つとき、\( T \) は少なくとも \( k \) 個の非零の主対角成分を持つため、次式が成り立つ。

\mathrm{rank}\, A = \mathrm{rank}\, T \geq k

\( A \) が対角化可能な場合、非零固有値の数 \( k \) と階数 \( \mathrm{rank}\, A \) は一致するため、等号が成立する。

次に、不等式の連鎖を示す。非零固有値に対し、コーシー・シュワルツの不等式を適用すると次が得られる。

|\mathrm{tr}\, A|^2 = \left| \sum_{i=1}^k \lambda_i \right|^2 \leq k \sum_{i=1}^k |\lambda_i|^2

ここで、フロベニウスノルムのユニタリ不変性 \( \mathrm{tr}\, A^* A = \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2 = \sum_{i,j=1}^n |t_{ij}|^2 \) を利用する。上三角行列 \( T \) の成分の和を分解すると、

k \sum_{i=1}^k |\lambda_i|^2 = k \sum_{i=1}^n |t_{ii}|^2 \leq k \sum_{i,j=1}^n |t_{ij}|^2 = k \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2 = k \cdot \mathrm{tr}\, A^* A

これらをまとめると、

|\mathrm{tr}\, A|^2 \leq k \cdot \mathrm{tr}\, A^* A \leq (\mathrm{rank}\, A) \cdot \mathrm{tr}\, A^* A

が得られ、両辺を \( \mathrm{tr}\, A^* A \) で割ることで、目的の不等式が示される。

\mathrm{rank}\, A \geq \frac{|\mathrm{tr}\, A|^2}{\mathrm{tr}\, A^* A}

等号成立は、コーシー・シュワルツの等号成立条件(すべての非零固有値が等しい)および、\( T \) の非対角成分がすべて \( 0 \) であること、さらに非零固有値の数 \( k \) が階数と一致することから、\( T = a I_k \oplus 0_{n-k} \) (\( a \neq 0 \))のときに限られる。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました