2.1.7
観察 2.1.7.
\( M_n \) におけるユニタリ行列(あるいは実直交行列)の集合は群を成す。この群は一般に、\( n \times n \) ユニタリ群(あるいは実直交群)と呼ばれ、\( GL(n, \mathbb{C}) \) の部分群である。
練習問題.
群とは、1つの結合法則を満たす二項演算(「乗法」)について閉じており、単位元と逆元をその集合内に含む集合である。これを確認せよ(2.1.7)。ヒント: 閉包性については (2.1.6) を用いる。行列の乗法は結合的であり、\( I \in M_n \) はユニタリ行列である。また、\( U^{*} = U^{-1} \) もユニタリ行列である。
\( M_n \) におけるユニタリ行列の集合(群)は、もう一つ非常に重要な性質を持っている。行列列の「収束」と「極限」の概念は第5章で正確に定義されるが、ここでは成分の「収束」と「極限」として理解できる。ユニタリ行列の定義式 \( U^{*} U = I \) は、\( U \) の各列のユークリッドノルムが1であることを意味し、したがって \( U = [u_{ij}] \) の各成分の絶対値は1を超えない。すなわち、ユニタリ行列の集合を \( \mathbb{C}^{n^2} \) の部分集合と見れば、それは有界集合である。
ここで、ユニタリ行列の無限列 \( U_k = [u_{ij}^{(k)}] \), \( k = 1, 2, \ldots \) を考え、すべての \( i, j = 1, 2, \ldots, n \) について
\lim_{k \to \infty} u_{ij}^{(k)} = u_{ij}
が存在すると仮定する。このとき、すべての \( k \) に対して \( U_k^{*} U_k = I \) が成り立つので、極限をとると
\lim_{k \to \infty} U_k^{*} U_k = U^{*} U = I
となる。ここで \( U = [u_{ij}] \) である。したがって、極限行列 \( U \) もユニタリ行列となる。つまり、ユニタリ行列の集合は \( \mathbb{C}^{n^2} \) において閉集合である。
有限次元ユークリッド空間において、閉かつ有界な部分集合はコンパクト集合である(付録E参照)。したがって、\( M_n \) におけるユニタリ行列の集合(群)はコンパクトである。ここでの最も重要な帰結は、ユニタリ行列に対する次の選択原理である。
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