[行列解析1.4.P15]単純固有値とランク1摂動の正則性

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.4.P15

1.4.問題15

\(A \in M_n\) の単純固有値 \(\lambda\) が与えられ、ベクトル \(x, y, z, w \in \mathbb{C}^n\) が次を満たすとする:

\(Ax = \lambda x\)、\(y^* A = \lambda y^*\)、\(y^* z = 0\)、および \(w^* x = 0\)。

次を示せ:

\(\kappa \neq 0\) の任意の \(\kappa\) に対して、行列 \(A - \lambda I + \kappa z w^*\) は正則である。

また、なぜ \(z = x\) ととることが可能か説明せよ。

ヒント

単純固有値であることから、\(A-\lambda I\) の零空間と余核はいずれも一次元であり、それぞれ \(x\) と \(y\) によって張られることを用いる。

ランク1行列 \( \kappa z w^* \) を加えたときの零空間の変化を考える。

解答例

\( \lambda \) は \(A\) の単純固有値であるから、 \( \ker(A-\lambda I)=\mathrm{span}\{x\} \) および \( \ker(A^*-\overline{\lambda} I)=\mathrm{span}\{y\} \) が成り立つ。

いま \( (A-\lambda I+\kappa z w^*)u=0 \) を満たすベクトル \(u\) が存在すると仮定する。この式に左から \(y^*\) を掛けると、

y^*(A-\lambda I)u+\kappa y^*z\, w^*u=0

となる。ここで \(y^*(A-\lambda I)=0\) かつ \(y^*z=0\) より、上式は自動的に成り立つ。

一方、元の式を \( (A-\lambda I)u=-\kappa z w^*u \) と書くと、右辺は \(z\) のスカラー倍である。したがって \(u\) は \( \mathrm{Im}(A-\lambda I) \) に属する必要がある。しかし、単純固有値の仮定より \( \mathrm{Im}(A-\lambda I)=\{v\in\mathbb{C}^n \mid y^*v=0\} \) であるから、\(z\) がこの条件を満たすのは \(y^*z=0\) のときのみである。

このときも、\(w^*x=0\) であるため、\(u\) が \(x\) の成分を持つと右辺は消えず、矛盾が生じる。従って非零解 \(u\) は存在せず、 \( A-\lambda I+\kappa z w^* \) は任意の \( \kappa\neq 0 \) に対して正則である。

最後に、\(z\) は条件 \(y^*z=0\) を満たす任意の非零ベクトルとして選べばよい。特に、\(x\) は右固有ベクトルであり、単純固有値の性質から \(y^*x\neq 0\) であるので、適当な線形変換により条件を満たすように取り直すことができる。したがって \(z=x\) と選ぶことが可能である。


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