[行列解析1.4.6a]観察

1.4.

観察 1.4.6a.

非零のベクトル \( x \in \mathbb{C}^n \) と行列 \( A \in M_n \) があり、もし \( Ax = \lambda x \) であるとする。また \( x^{*}A = \mu x^{*} \) が成り立つならば、\(\lambda = \mu\) である。

証明.

\( x \) を単位ベクトルと仮定できる。次を計算する:

\mu = \mu x^{*}x = (x^{*}A)x = x^{*}Ax = x^{*}(Ax) = x^{*}(\lambda x) = \lambda x^{*}x = \lambda

したがって \(\lambda = \mu\) である。■

演習.

\( A \in M_n \) の固有値 \(\lambda\) に対応する左固有ベクトル \( y \) が、共役転置 \( A^{*} \) の固有値 \(\overline{\lambda}\) に対応する右固有ベクトルであることを示せ。また、\(\overline{y}\) が転置行列 \( A^{T} \) の固有値 \(\lambda\) に対応する右固有ベクトルであることも示せ。

演習.

\( A \in M_n \) が対角化可能で、\( S \) が正則行列であり、

S^{-1}AS = \Phi = \mathrm{diag}(\lambda_1, \ldots, \lambda_n)

とする。ここで \( S = [x_1 \ \cdots \ x_n] \)、\( S^{-*} = [y_1 \ \cdots \ y_n] \) (0.2.5式)と列ごとに分割する。恒等式

AS = S\Phi

は、各列ベクトル \( x_j \) が \( A \) の固有値 \(\lambda_j\) に対応する右固有ベクトルであることを意味する。同様に次が成り立つことを説明せよ:

(S^{-*})^{*} A = \Phi (S^{-*})^{*}

各列ベクトル \( y_j \) は、\( A \) の固有値 \(\lambda_j\) に対応する左固有ベクトルである。また、各 \( j = 1, \ldots, n \) に対して

y_j^{*} x_j = 1

が成り立ち、さらに \( i \neq j \) のときは

y_i^{*} x_j = 0

である。

左固有ベクトルを単なる右固有ベクトルの理論的な対照物として軽視してはならない。

両者は行列について異なる情報を伝えることができ、またそれらの相互作用を理解することは非常に有用である。

次に、対角化可能とは限らない行列に対する結果のバージョンを検討する。


参考:Matrix Analysis:Second Edition ISBN 0-521-30587-X.(当サイトは公式と無関係です)

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